
Web3とは¶
Web3(Web 3.0)は、ブロックチェーンを基盤として、特定の企業や管理者に依存せずにデータや価値をやりとりできるインターネットを目指す構想の総称。
Webの変遷はしばしば次のように整理される。
| 世代 | 時期の目安 | 特徴 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| Web1 | 1990年代〜 | 読むだけ(Read)。静的なページを一方向に配信 | 個人ホームページ、ポータルサイト |
| Web2 | 2000年代中盤〜 | 読み書きできる(Read / Write)。ユーザー生成コンテンツ。ただしデータとアカウントはプラットフォーム企業が管理 | SNS、検索エンジン、EC |
| Web3 | 2010年代後半〜 | 読み書きに加えて所有できる(Read / Write / Own)。資産・データ・ルールをブロックチェーン上に置き、プラットフォームへの信頼を不要にする | 暗号資産、DeFi、NFT、DAO |
「Web3」という言葉自体はEthereumの共同創設者Gavin Woodが2014年頃に使い始めたもので、明確な技術的定義があるわけではない。マーケティング用語として使われる場面も多い点には注意。
なぜブロックチェーンなのか¶
信頼できる第三者への依存¶
世の中のシステムのほとんどは、集権的な管理者(運営会社)がいることを前提にしている。
決済:銀行が不正な送金や違法な口座を監視する
検索:検索エンジン企業が違法サイトを結果から除外する
保険:保険会社が被保険者の被害の真偽を調査する
しかし管理者自体が不正を働く可能性もある(銀行が預金を流用する、検索結果を自社に都合よく操作する、など)。それを防ぐために監督機関を置いても、今度は「その監督機関を誰が監督するのか」という問題が残る。これは古くから 「誰が見張りを見張るのか?」(Quis custodiet ipsos custodes?) と呼ばれる問題。
トラストレス¶
ブロックチェーンの基本的な価値は、信頼できる第三者(trusted third party)に頼らずに、参加者全員が同じ記録に合意できること。Bitcoinの論文(Nakamoto, 2008)の冒頭にも「信用ではなく暗号学的証明に基づく電子決済システム」を目指すと書かれている。
この性質は トラストレス(trustless) と呼ばれる。「システムを機能させるうえで、管理者や個々の参加者を信用する必要がない」という意味であり、
暗号技術(ハッシュ関数・デジタル署名)によって記録の改ざんやなりすましを検知可能にし
経済的インセンティブ(報酬とコスト)によって、不正をするより正直に振る舞うほうが得になるようにする
ことで実現している。不正が割に合わない仕組みを作れれば、そもそも見張りは要らない、という発想である。
ブロックチェーンが不要な場面¶
逆に言えば、信頼できる第三者に任せて問題ない場面では、無理にブロックチェーンを使う必要はない。ブロックチェーンは通常のデータベースと比べて
処理性能が低い(スループットが小さく、確定まで時間がかかる)
手数料がかかる
データを後から修正・削除できない
外部世界の情報を直接扱えない(オラクル問題)
といった制約がある。「管理者を信用できない/したくない複数の主体が、共通の記録を持ちたい」という状況でこそ価値がある。
Web3の構成要素¶
| 層 | 内容 | 本章での位置 |
|---|---|---|
| 基盤技術 | ハッシュ関数・デジタル署名、P2Pネットワーク、コンセンサスアルゴリズム | ブロックチェーン |
| Layer 1 | 合意形成とデータ保存を自ら行うチェーン。Bitcoin、Ethereumなど | ブロックチェーン、Ethereum |
| スケーリング・相互運用 | L1の処理能力の限界を補うLayer 2、異なるチェーンをつなぐブリッジ | スケーリングと相互運用性 |
| アプリケーション | スマートコントラクトの上に構築されるサービス | アプリケーション |
歴史¶
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1991 | Haber & Stornetta がハッシュの連鎖によるタイムスタンプ方式を提案(ブロックチェーンの原型) |
| 2008 | Satoshi Nakamoto がBitcoinの論文を公開 |
| 2009 | Bitcoinのネットワークが稼働(Genesisブロック) |
| 2013 | Vitalik Buterin がEthereumのホワイトペーパーを公開 |
| 2015 | Ethereumのメインネットが稼働 |
| 2016 | The DAO事件(スマートコントラクトの脆弱性による資金流出、Ethereumのハードフォーク) |
| 2017 | ICOブーム、CryptoKitties、BitcoinでSegWit導入 |
| 2020 | DeFi Summer(Uniswap、Compound等の急成長) |
| 2021 | NFTブーム、BitcoinでTaproot導入 |
| 2022 | Ethereumが The Merge でPoWからPoSへ移行。Terra/LUNAやFTXの破綻 |
| 2024 | EthereumのDencunアップグレード(EIP-4844)でL2の手数料が大幅低下。米国でBitcoin現物ETF承認 |
参考文献¶
書籍¶
Andreas M. Antonopoulos (2017). Mastering Bitcoin, 2nd edition. O’Reilly.(GitHubで公開)
Andreas M. Antonopoulos & Gavin Wood (2018). Mastering Ethereum. O’Reilly.(GitHubで公開)
Arvind Narayanan et al. (2016). Bitcoin and Cryptocurrency Technologies. Princeton University Press.
論文¶
Nakamoto, S. (2008). Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System.
Buterin, V. (2013). Ethereum Whitepaper.
ネット資料¶
東京大学 ブロックチェーンイノベーション寄付講座(ブロックチェーン公開講座の講義動画がYouTubeで公開されている)