コンジョイント分析(conjoint analysis)は、複数の属性(attribute)の組み合わせからなる「プロファイル」(製品・サービス・提案などの具体案)に対する回答者の選好データから、各属性・各水準(level)がどの程度全体の選好に寄与しているかを分解して推定する統計的手法の総称である。
「複数の項目・条件を組み合わせたときに、人はどの要素をどのくらい重視しているか」を数量化する、という意味では、後述するBradley-TerryモデルやAHPと同じ 選好計測(preference measurement) という大きな枠組みに属する。
由来¶
conjoint(= CON + JOINT、「一緒に考える」)という名前は、複数の属性を 同時に(jointly) 提示して評価させる点に由来する。
数理心理学におけるコンジョイント測定理論(conjoint measurement theory)(Luce & Tukey, 1964)が起源
マーケティングリサーチへの応用は Green & Rain (1971) の “Conjoint Measurement for Quantifying Judgmental Data” に始まる
以降、製品開発・価格戦略・市場シェア予測など実務での利用が広がった
基本的な考え方¶
回答者が製品やサービスを評価する際、全体の効用(utility)は各属性の効用の合計として表現できると仮定する(加法的部分効用モデル、additive part-worth model)。
属性が個あり、属性の水準をとすると、プロファイルの全体効用は
と表される。ここでは属性の水準がもつ**部分効用(part-worth utility)**である。
回答者に複数のプロファイル(属性の組み合わせ)を提示し、評定・順位付け・選択などの形で選好を尋ねることで、このを統計的に推定する。属性間の相対的な重要度(importance)は、各属性がとりうる部分効用の範囲(レンジ)の大きさとして評価されることが多い。
属性・水準・プロファイルの用語¶
属性(attribute):製品やサービスを構成する要素。例)価格、容量、ブランド、色
水準(level):各属性がとりうる具体的な値。例)価格の水準として「1,000円」「1,500円」「2,000円」
プロファイル(profile):各属性から水準を1つずつ選んで組み合わせた、具体的な製品案。実験計画(実験計画(属性・水準の設計))に従って作成する
部分効用(part-worth utility):各属性の各水準がもつ効用の推定値
重要度(importance):属性間の相対的な影響力
手法の分類¶
データの取得方法・分析モデルによっていくつかの流派に分かれる。
| 手法 | 回答形式 | 推定モデル |
|---|---|---|
| 評定型(traditional)コンジョイント分析 | 各プロファイルへの評点(1〜7点など) | 線形回帰(OLS) |
| 選択型コンジョイント分析(CBC) | 複数プロファイルの選択肢から1つを選択 | 多項ロジットモデル(MNL) |
| 適応型コンジョイント分析(ACA / ACBC) | 前の回答に応じて次の質問を動的に変更 | 上記のいずれか+適応的アルゴリズム |
| MaxDiff(ベストワーストスケーリング) | 提示項目群から「最も良い/最も悪い」を選択 | 多項ロジットモデル(MNL) |
さらに、本ノートではより広く「複数の項目・属性への重み付け」という観点から、選好計測の親戚にあたる手法も扱う。
| 手法 | 回答形式 | 推定モデル |
|---|---|---|
| Bradley-Terryモデル | 2項目のペア比較で勝敗・優劣を判定 | Bradley-Terry(二値ロジットの特殊形) |
| AHP(階層分析法) | 全ペアの一対比較を9段階などで評定 | 一対比較行列の固有値法 |
Bradley-Terryモデルは、CBCで使われる多項ロジットモデルを2択(ペア比較)に限定した特殊ケースに一致する(Luceの選択公理)ため、コンジョイント分析の選択モデルと数学的に地続きである。一方AHPは固有値法によって重みを求める点で異なる系譜(多基準意思決定、MCDM)に属するが、「複数項目の相対的な重要度を求める」という目的は共通する。
用途¶
製品コンセプトの最適化:どの属性の組み合わせが最も選好されるかを推定し、最適な製品仕様を設計する
価格戦略:価格という属性の部分効用から、価格弾力性や最適価格帯を推定する
市場シェアシミュレーション:推定した部分効用モデルを用いて、新製品や競合製品の市場シェアを事前に予測する(マーケットシミュレーション)
支払意思額(WTP)の推定:ある機能の追加に対して消費者がいくら多く払ってもよいと考えるかを金額換算する(支払意思額(WTP)の推定)
項目の優先順位付け・スコアリング:製品属性に限らず、施策・要求仕様・評価基準など「複数の項目に重みをつけたい」場面全般に応用できる