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漸近理論

関係する定理

マルコフの不等式

証明

指示関数I(⋅)I(\cdot)をもちいて

E[X]=E[X{I(X≥c)+I(X<c)}]≥E[XI(X≥c)]≥cE[I(X≥c)]=cP(X≥c)\begin{aligned} E[X] &= E[X \{ I(X \geq c) + I(X < c) \} ]\\ & \geq E[X I(X \geq c) ]\\ & \geq c E[ I(X \geq c) ] = c P(X \geq c) \end{aligned}

マルコフの不等式は 期待値よりも極端に大きな値を取る確率が低い ことを意味する。

例えばc=5E[X]c = 5 E[X]とおけば

P(X≥5E[X])≤E[X]5E[X]=15P(X \geq 5 E[X]) \leq \frac{E[X]}{5 E[X]} = \frac{1}{5}
P(X >= 5E[X]) = 0.0067
Markov Inequality Upper Bound = 0.2

チェビシェフの不等式

証明

Y=(X−μ)2Y=(X-\mu)^2とおき、YYにマルコフの不等式

P(X≥c)≤E[X]cP(X \geq c) \leq \frac{E[X]}{c}

を適用すれば、

P(Y≥c2)≤E[Y]c2=σ2c2P(Y \geq c^2) \leq \frac{E[Y]}{c^2} = \frac{\sigma^2}{c^2}

ここで Y≥c2⟺∣X−μ∣≥cY \geq c^2 \Longleftrightarrow|X-\mu| \geq c であるから P(Y≥c2)=P(∣X−μ∣≥c)P(Y \geq c^2) = P(|X - \mu| \geq c) となり

P(∣X−μ∣≥c)≤σ2c2P(|X-\mu|\geq c) \leq \frac{\sigma^2}{c^2}

が成立する

チェビシェフの不等式は 期待値から値が極端に離れる確率が低い ことを意味する。

例えばc=5σc = 5 \sigmaとおけば

P(∣X−μ∣≥5σ)≤σ25σ2=15P(|X-\mu|\geq 5\sigma) \leq \frac{\sigma^2}{5 \sigma^2} = \frac{1}{5}

例:2シグマ範囲

期待値からの2シグマ範囲には正規分布だと95%が入る。

P(∣X−μ∣ ≤ 2σ) = 0.954
Source
<Figure size 500x200 with 1 Axes>

チェビシェフの不等式による任意の分布への下限は

P(X∈[μ−2σ,μ+2σ])=P(∣X−μ∣≤2σ)≥1−P(∣X−μ∣≥2σ)=1−σ24σ2=1−14=34\begin{aligned} P(X \in [\mu-2\sigma, \mu+2\sigma]) = P(|X - \mu| \leq 2\sigma) &\geq 1 - P(|X - \mu| \geq 2\sigma)\\ &= 1 - \frac{\sigma^2}{4\sigma^2}\\ &= 1 - \frac{1}{4}\\ &= \frac{3}{4}\\ \end{aligned}

となり、正規分布以外でも75%以上あることがわかる

例:期待値からのズレ

nn個のサンプルX1,…,XnX_1,\dots,X_nがi.i.d.であるとする。これらのサンプルの標本平均Xˉ\bar{X}がその期待値E[Xˉ]E[\bar{X}]からどれだけズレるかを見てみる

P(∣Xˉ−E[Xˉ]∣≥c)≤Var⁡[Xˉ]c2P(|\bar{X} - E[\bar{X}]|\geq c) \leq \frac{ \operatorname{Var}[\bar{X}]}{c^2}

もしc=1c=1なら、標本平均と期待値の差の絶対値が1以上になる確率はその分散が上限になるということ。

P(∣Xˉ−E[Xˉ]∣≥1)≤Var⁡[Xˉ]=Var⁡[X]nP(|\bar{X} - E[\bar{X}]|\geq 1) \leq \operatorname{Var}[\bar{X}] = \frac{ \operatorname{Var}[X] }{ n }

例えばサンプルが商談から成約したかどうかであり、真の成約率が20%という確率変数X∼Ber(p=0.2)X\sim Ber(p=0.2) の実現値だとすると、E[Xˉ]=0.2,Var⁡[Xˉ]=p(1−p)=0.16E[\bar{X}]=0.2, \operatorname{Var}[\bar{X}] = p(1-p) = 0.16で、このときc=0.1c=0.1とおけば

P(∣Xˉ−0.2∣≥0.1)≤0.16n×0.12=16nP(|\bar{X} - 0.2| \geq 0.1) \leq \frac{0.16}{ n \times 0.1^2 } = \frac{ 16 }{ n }

となり、仮にn=100n=100なら16%程度の確率が上限(分布によらない上限)になることがわかる

Source
<Figure size 400x300 with 1 Axes>

ヘフディングの不等式

チェビシェフの不等式は幅広い範囲で有用ではあるものの、裾の確率を緩く評価してしまう。

例えば上記の期待値からのズレの例

P(∣Xˉ−0.2∣≥0.1)≤16nP(|\bar{X} - 0.2| \geq 0.1) \leq \frac{ 16 }{ n }

では、n=1000n=1000であっても「1.6%1.6\%は起こるかもしれない」というかなり安全に寄った評価をしてしまう。これは実際にシミュレーションすると0%になるレベルの稀少な事例にもかかわらず。

Source
<Figure size 400x300 with 1 Axes>

このような裾の確率をより厳しく抑えるのに役立つのが ヘフディングの不等式 (Hoeffding’s inequality)

すべての確率変数XiX_iが区間[0,1][0,1]に値を取る場合はもっと単純に

P(∣Xˉ−E[Xˉ]∣≥c)≤2exp⁡(−2nc2)P(|\bar{X}-E[\bar{X}]| \geq c) \leq 2 \exp( -2 n c^2 )

となる。

前出の成約率の例だと、n=1000,c=0.1n=1000, c=0.1のとき

P(∣Xˉ−E[Xˉ]∣≥0.1)≤2exp⁡(−2×1000×0.12)=2exp⁡(−20)≈4.122×10−9≈0\begin{aligned} P(|\bar{X}-E[\bar{X}]| \geq 0.1) &\leq 2 \exp( -2 \times 1000 \times 0.1^2 )\\ &= 2 \exp( -20 )\\ &\approx 4.122 \times 10^{-9} \approx 0 \end{aligned}

となり、観測結果に近くなる。

しかしn=100,c=0.1n=100, c=0.1のとき

P(∣Xˉ−E[Xˉ]∣≥0.1)≤2exp⁡(−2×100×0.12)=2exp⁡(−2)≈0.27\begin{aligned} P(|\bar{X}-E[\bar{X}]| \geq 0.1) &\leq 2 \exp( -2 \times 100 \times 0.1^2 )\\ &= 2 \exp( -2 )\\ &\approx 0.27 \end{aligned}

とだいぶ大きく評価することもある様子…?

確率収束

平均2乗収束

チェビシェフの不等式を使うと「確率変数列がある確率変数に平均2乗収束するならば確率収束する」という命題が導かれる → 大数の法則

例:大数の法則

証明

ε>0\varepsilon > 0を任意の定数とする。E[Xˉn]=μ,Var[Xˉn]=σ2/nE[\bar{X}_n] = \mu, \mathrm{Var}[\bar{X}_n] = \sigma^2/nであるから、Xˉ\bar{X}にチェビシェフの不等式を適用すれば

P(∣Xˉn−μ∣≥ε)≤σ2nε2P(|\bar{X}_n-\mu| \geq \varepsilon) \leq \frac{\sigma^2}{n \varepsilon^2}

となる。ここでn→∞n \to \inftyとおけば右辺は0に収束するから

∀ε>0,lim⁡n→∞P(∣Xˉn−μ∣≥ε)=0\forall \varepsilon > 0, \quad \lim_{n\to \infty} P(|\bar{X}_n-\mu| \geq \varepsilon) = 0

例:推定量の一致性

推定量θ^\hat{\theta}が真のパラメータθ\thetaに確率収束

θ^→pθ\hat{\theta} \overset{p}{\to} \theta

するとき、その推定量は一致性(consistency)を持つという

概収束

分布収束

例:中心極限定理

確率変数列{Xn}n=1∞\{X_n\}_{n=1}^{\infty}はi.i.d.で平均μ:=E[Xi]\mu:=E[X_i]と分散σ2:=Var(Xi)\sigma^2:=Var(X_i)が存在するとする。このとき、以下の分布収束が成り立つ

n(Xˉ−μ)→dN(0,σ2),n→∞\sqrt{n} (\bar{X} - \mu) \overset{d}{\to} N(0, \sigma^2) ,\hspace{1em} n\to\infty

ここでN(0,σ2)N(0, \sigma^2)をXˉ\bar{X}の漸近分布(asymptoticd distribution)という。

(※なお、N(0,σ2)N(0, \sigma^2)は正規分布を表す記号ではなく、正規分布に従う確率変数を意味するので注意。ややこしい記法だが標準的でよく見られる書き方である)

なお、上の式は

Xˉ−μ→d1nN(0,σ2)=N(0,σ2n)\bar{X} - \mu \overset{d}{\to} \frac{1}{\sqrt{n}} N(0, \sigma^2) = N\left(0, \frac{\sigma^2}{n}\right)

のように整理できる。

(σ2\sigma^2は未知だが標本分散を用いてもこの関係性が成り立つ)