経営・マーケティング系の概念まとめ#
マーケティング近視眼#
マーケティング近視眼(Marketing Myopia)#
企業が商品を販売するにあたって、その商品の機能のみに着眼してしまうと、自らの使命を狭く定義することになり、環境変化に対応できなくなる。
セオドア・レビットが1960年にハーバード・ビジネス・レビューで発表した考え方。
例:自動車や航空機などの進展によって衰退へと追いやられた鉄道会社は、自らの事業・使命を「人や物を目的地に運ぶこと」とは捉えず、「車両を動かすこと」と定義してサービスを変化させなかった
カスタマー・マイオピア(Customer Myopia)#
顧客絶対主義となり、顧客の言いなり状態であること。過度なマーケットインや値下げを引き起こすことにつながる。
経営学の言葉ではなく、日本のビジネス書などにおける造語?
消費者近視眼(Consumer Myopia)#
経営学ではなく経済学で登場した概念。
「本体価格は安いプリンターだが、インクが高い」というような隠蔽的な価格戦略を企業がとったとき、そのような戦略に騙されてしまう消費者を myopic consumers あるいは unaware consumers という。
Myopic Consumersがいる経済では、企業による隠蔽が非効率を生む。
そのような隠蔽を看破する消費者(Bayesian consumers)の場合、均衡において企業は情報隠蔽をしない。
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2012年、起亜自動車と現代自動車が燃費を偽装していたことが米環境保護局(EPA)によって認められ、表示を改めることとなった。
DIDを用いて、偽装があったモデルにおける表示変更の前後における自動車の市場販売価格の変化を推定 → 1.7%の均衡価格の減少
燃費の表示変更による生涯燃料費用の変化に対しては$1?程度は無視される
ランダム効用モデルとしてのモデリング
ジョブ理論#
プロダクトアウト / マーケットイン#
プロダクトアウト(product out, product oriented)
企業が商品開発や生産を行う上で、作り手の理論や計画を優先させる方法。
買い手(顧客)のニーズよりも、「作り手がいいと思うものを作る」「作ったものを売る」という考え方。
⭕長所:
もし潜在的なニーズに合致した場合は、大きなプロダクト・イノベーションを生むことになる
例:iPhoneはスマートフォンという概念がない時代に発表され、世界的なヒット商品になり、スマホ市場を創出した
例:フォードは主な移動手段が馬や馬車だった時代に車を生産してヒットし、自動車産業を切り拓いた
❌️短所:
潜在的なニーズに合致しないプロダクトアウトは失敗する蓋然性が高い
マーケットイン(market in, market oriented)#
顧客の声や視点を重視して商品の企画・開発を行い、提供していく方法。 プロダクトアウトの対義語であり、「顧客が望むものを作る」「売れるものだけを作り、提供する」という考え方。
⭕長所:
「顧客の声」つまり顕在化したニーズに基づくため失敗する蓋然性は低い
❌️短所:
潜在的なニーズ(顧客自身も「こういうもの」として常識として受け入れており、課題に気づいていないケース)を捉えることができない
プロダクトアウト v.s. マーケットイン#
顧客の声を聞くべきか?は対立する意見がある
「顧客は常に正しい」“The customer is always right.” (Marshall Field)
「何が欲しいかと尋ねれば、人は皆『もっと速い馬』がほしいと答えるだろう」“If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.” (Henry Ford)
価格戦略#
価格競争で勝てるケースは限定される#
価格競争で勝てるのは、
マーケットリーダー(シェア1位):(1) 販売数量が多ければ1個あたりのコストが減るため & (2) 経験の蓄積により生産効率が高くなるため
プロセス・イノベーションにより、コストが低い(例:ネット証券は少ない人件費で販売するため手数料が格段に安い)
プロダクトセリングとバリューセリング#
プロダクトセリング :商品を売ることを主眼とする。コモディティ化した商品を、価格競争しながら薄利多売で儲ける戦略。
バリューセリング :価値・体験を売ることを主眼とした戦略。差別化された商品を高値で売る。
例:リッツ・カールトンの1杯1000円のコーラ。ライムが添えられた冷えたコーラが出てくる
バリュー・プロポジション#
バリュー・プロポジション (value proposition) は、顧客が望んでいて、自社が提供できて、かつ、競合が提供できない価値のこと。
イノベーター理論・キャズム理論#
イノベーター理論#
新たな製品を採用するタイミングが早い順に消費者を5つに分類
イノベーター(革新者、市場全体の2.5%)
アーリーアダプター(初期採用者、市場全体の13.5%)
アーリーマジョリティ(前期追随者、市場全体の34%)
レイトマジョリティ(後期追随者、市場全体の34%)
ラガード(遅滞者、市場全体の16%)
1962年にエベレット・ロジャース(Everett M. Rogers)によって提唱された
ポイントは
リスク選好度の異なる消費者群に対しては異なる訴求の仕方をしたほうがよい
イノベーターとアーリーアダプター(合わせて市場の16%)を攻略することが、その商品が普及するかどうかを左右する
キャズム理論#
アーリーアダプターからアーリーマジョリティに普及するまでの間に谷(キャズム)があり、多くの商品がキャズムを超えられずに消えていくというもの。
キャズム理論はマーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーアにより提言された。
アーリーアダプターは「誰も使っていない商品を採用し、他者に先んじる」ことを望む層である一方、アーリーマジョリティは「多くの人が採用していて安心できる商品を採用し、他者に後れを取らない」ことを望む層である。
そのため、市場全体の16%というわずかな割合のイノベーターとアーリーアダプターのみにしか採用されていない状況では、「他者が使用しているものを採用したい」というアーリーマジョリティに商品の採用を踏みとどまらせる理由となってしまう。
よって、キャズムを超えて商品を普及させていくには、 アーリーアダプターの攻略だけでなく、アーリーマジョリティの攻略も重要 と主張する。