微分学の基礎的な定理#

概要図:連続関数の性質 \(\rightarrow\) ロールの定理 \(\rightarrow\) 平均値の定理 \(\rightarrow\) ティラーの定理 \(\rightarrow\) テイラー展開

ロールの定理#

ロールの定理

関数 \(f(x)\)\(a \leqq x \leqq b\) で連続で \(a<x<b\) のすべての点で微分可能であり \(f(a)=f(b)\) であれば、 少なくとも 1 点 \(c(a<c<b)\) において \(f^{\prime}(c)=0\) となる

これをロール (M. Rolle, 1652-1719)の定理という。

証明

連続関数は区間 \(a \leqq x \leqq b\) で最大値 \(M\)、 最小値 \(m\) をとる。

もし \(m=M\) ならば、この関数は一定の値 \(m=M\) をとり続けるから、区間内のすべての点で\(f'(x)=0\)

次に\(m < M\)の場合を考える。\(f(a) = f(b)\)であるから、\(m\)\(M\)の両方が端点での関数値となることはない。

\(x=c(a<c<b)\) で最大値 \(f(c)=M\) とする。この最大値は \(x=c\) の近くで極大値であるから、 \(f^{\prime}(c)=0\) である。

\(x=c\)\(f(c)=m\) の場合も同様に証明される。

平均値の定理#

平均値の定理

関数 \(f(x)\)\(a \leqq x \leqq b\) で連続で \(a<x<b\) で微分可能ならば、ある点 \(c(a<c<b)\) が存在して、

\[ f^{\prime}(c)=\frac{f(b)-f(a)}{b-a} \quad(a<c<b) \]

が成り立つ。

この定理は 直線 \(\mathrm{AB}\) と同じ傾きをもつ接線が弧 \(\mathrm{AB}\)上に存在することを意味している。

いま

\[ g(x) = \frac{f(b) - f(a)}{b - a} (x - a) + f(a) - f(x) \]

という関数を考える。\(g(x)\)\(a \leqq x \leqq b\) で連続で \(a<x<b\) で微分可能である。また、\(g(a) = g(b) = 0\)である。

つまりロールの定理が使えるので、ロールの定理を使うと

\[ g'(c) = 0 \quad (a < c < b) \]

となる。

実際\(g(c)\)

\[ g(c) = \frac{f(b) - f(a)}{b - a} (c - a) + f(a) - f(c) \]

なので

\[ g'(c) = \frac{f(b) - f(a)}{b - a} \]

が成り立つ。

テイラーの定理#

平均値の定理

\[ f(b)=f(a)+(b-a) f^{\prime}(c) \quad(a<c<b) \]

を一般化する。

テイラーの定理

関数 \(f(x)\)\(a \leqq x \leqq b\)\(n\) 階まで連続な導関数をもち、 \(a<x<b\)\(n+1\) 階微分可能ならば、ある点 \(c(a<c<b)\) が存在して、

\[\begin{split} \begin{aligned} f(b)= & f(a)+f^{\prime}(a)(b-a)+\frac{1}{2 !} f^{\prime \prime}(a)(b-a)^2+\cdots+\frac{1}{n !} f^{(n)}(a)(b-a)^n \\ & +\frac{1}{(n+1) !} f^{(n+1)}(c)(b-a)^{n+1} \quad(a<c<b) \end{aligned} \end{split}\]

\(n=0\)(1階微分可能)のとき、平均値の定理と一致する。

\(b=x\)とおいたものは、 関数\(f(x)\)の点\(a\)における テイラー展開 (Taylor expansion)と呼ばれる。

テイラー展開#

テイラー展開の\(c\)\(c=a+\theta(b-a)(0<\theta<1)\)と書くと、

\[ \begin{aligned} f(b)=f(a)+f^{\prime}(a)(b-a)+\frac{1}{2 !} f^{\prime \prime}(a)(b-a)^2+\cdots+\frac{1}{n !} f^{(n)}(a)(b-a)^n +\frac{1}{(n+1) !} f^{(n+1)}(a+\theta(b-a))(b-a)^{n+1} \quad(0<\theta<1) \end{aligned} \]

\(b = x\)とおけば、テイラー展開と呼ばれる式になる

テイラー展開

\[\begin{split} \begin{aligned} f(x)= & f(a)+f^{\prime}(a)(x-a)+\frac{1}{2 !} f^{\prime \prime}(a)(x-a)^2+\cdots+\frac{1}{n !} f^{(n)}(a)(x-a)^n \\ & +\frac{1}{(n+1) !} f^{(n+1)}(a+\theta(x-a))(x-a)^{n+1} \quad(0<\theta<1) \end{aligned} \end{split}\]

これを関数\(f(x)\)の点\(a\)における テイラー展開(Taylor expansion) という。

マクローリン展開#

テイラー展開の特別の場合として、\(a=0\)のときの場合を マクローリン展開 という。

マクローリン展開

\[\begin{split} \begin{aligned} f(x)= & f(0) + f^{\prime}(0)x + \frac{1}{2 !} f^{\prime \prime}(0) x^2 + \cdots + \frac{1}{n !} f^{(n)}(0) x^n \\ & + \frac{1}{(n+1) !} f^{(n+1)}(\theta x) x^{n+1} \quad(0<\theta<1) \end{aligned} \end{split}\]

テイラー級数とマクローリン級数#

関数\(f(x)\)の点\(a\)におけるテイラー展開は、

\[\begin{split} f(x)=f(a)+f^{\prime}(a)(x-a)+\frac{1}{2 !} f^{\prime \prime}(a)(x-a)^2+\cdots+\frac{1}{n !} f^{(n)}(a)(x-a)^n+R_{n+1} \\ R_{n+1}=\frac{1}{(n+1) !} f^{(n+1)}(a+\theta(x-a))(x-a)^{n+1} \quad(0<\theta<1) \end{split}\]

となり、有限個のベキ項と剰余\(R_{n+1}\)の和の形になる。

関数\(f(x)\)をより良く近似しようとすると、剰余\(R_{n+1}\)をより小さくする必要がある。

剰余\(R_n\)\(n\)の値を増やしていくと、数列\(R_1, R_2, \cdots, R_n, \cdots\)を作る。もし、数列\(\{R_n\}\)\(0\)に収束する、すなわち

\[ \lim_{n\to \infty} \{R_n\} = 0 \]

ならば、\(n\)を増やしてより多くの項で近似するほど、よりよい近似になる。

このとき、

\[ f(x)=f(a)+f^{\prime}(a)(x-a)+f^{\prime \prime}(a) \frac{(x-a)^2}{2 !}+\cdots+f^{(n)}(a) \frac{(x-a)^n}{n !}+\cdots \]

と書く。最後の\(\cdots\)は無限に和が続くことを意味している。これを テイラー級数 (Taylor series)と呼ぶ。

テイラー級数

\[ f(x)=f(a)+f^{\prime}(a)(x-a)+f^{\prime \prime}(a) \frac{(x-a)^2}{2 !}+\cdots+f^{(n)}(a) \frac{(x-a)^n}{n !}+\cdots \]

マクローリン級数

\[ f(x)=f(0)+f^{\prime}(0) x+f^{\prime \prime}(0) \frac{x^2}{2 !}+\cdots+f^{(n)}(0) \frac{x^n}{n !}+\cdots \]