練習問題メモ 6(正則行列)

練習問題メモ 6(正則行列)#

6.1#

次の問いに答えよ。

1.正則行列の定義を書け。

n次正方行列Aに対し

A1A=AA1=I

を満たす正方行列A1が存在する行列Aを正則行列という

また、正則行列であるための必要十分条件はdet(A)0である

2.次の(ア)、(イ)の正則行列の逆行列を求めよ。

 (ア) (1ab01c001) (イ) (111112121)

2. (ア)#

解法1. 逆行列の定義から余因子行列を求めて解く

A=(1ab01c001)

とおくと、

A1=1|A|A~

A~は余因子行列)

なので、行列式と余因子行列を求めていく。

まず行列式は

|A|=13+ac0+00b1c0a01b10=1

余因子行列は

A11~=(1)1+1|A11|=1×1=1A12~=(1)1+2|A12|=1×0=0A13~=(1)1+3|A13|=1×0=0A21~=(1)2+1|A21|=1×a=aA22~=(1)2+2|A22|=1×1=1A23~=(1)2+3|A23|=1×0=0A31~=(1)3+1|A31|=1×(acb)=acbA32~=(1)3+2|A32|=1×c=cA33~=(1)3+3|A33|=1×1=1
A1=1×A~=(1aacb01c001)
A1A=(1aacb01c001)(1ab01c001)=(1aabac+(acb)01cc001)=(100010001)

解法2. 行基本変形で解く

(|E)=(1ab10001c010001001)

の形にする。

3行目をb倍して1行目に加える

(1a010b01c010001001)

3行目をc倍して2行目に加える

(1a010b01001c001001)

2行目をa倍して1行目に加える

(1001aacb01001c001001)=(E|1)

2. (イ)#

A=(111112121)

とおく。

|A|=13+12×2+12×21×221313=1+2+2411=1
A~11=(1)1+1|A11|=1×(1222)=3A~12=(1)1+2|A12|=1×(12)=1A~13=(1)1+3|A13|=1×(21)=1A~21=(1)2+1|A21|=1×(12)=1A~22=(1)2+2|A22|=1×(11)=0A~23=(1)2+3|A23|=1×(21)=1A~31=(1)3+1|A31|=1×(21)=1A~32=(1)3+2|A32|=1×(21)=1A~33=(1)3+3|A33|=1×(11)=0
A~=(311101110)
A1=1|A|A~=A~=(311101110)
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import numpy as np

A = np.array([
    [1, 1, 1],
    [1, 1, 2],
    [1, 2, 1],
])

def cofactor(A, i, j):
    """余因子を計算する関数"""
    A_minor = np.delete(A, i, axis=0)
    A_minor = np.delete(A_minor, j, axis=1)
    return (-1)**(i + j) * np.linalg.det(A_minor)

def cofactor_matrix(A):
    C = np.zeros_like(A, dtype=np.float16)
    for i in range(A.shape[0]):
        for j in range(A.shape[1]):
            C[i, j] = cofactor(A, i=i, j=j)
    return C.T

-cofactor_matrix(A)
array([[ 3., -1., -1.],
       [-1., -0.,  1.],
       [-1.,  1., -0.]], dtype=float16)
np.linalg.inv(A)
array([[ 3., -1., -1.],
       [-1.,  0.,  1.],
       [-1.,  1.,  0.]])
np.linalg.det(A[1:,1:])
-2.9999999999999996

6.2#

n 次の正方行列 A11,A12,A22,X11,X12,X21,X22 を用いて、 2n 次の正方行列 A および X を $A=(A11A12OA22),X=(X11X12X21X22)$

により定める。

  1. AX を計算せよ。

  2. A11 および A22 がともに正則ならば、 A は正則であることを示し、さらに A の逆行列を求めよ。

  1. AX を計算せよ。

AX=(A11X11+A12X21A11X12+A12X22A22X21A22X22)
  1. A11 および A22 がともに正則ならば、 A は正則であることを示し、A の逆行列を求めよ。

解法1 ブロック行列の行列式,逆行列の公式と証明 | 高校数学の美しい物語 の公式を参考にする場合

|A|=|A11||A22OA111A12|=|A11||A22|

よって

|A11|0|A22|0|A|0

なので、A11 および A22 がともに正則ならば、 A は正則。

逆行列は、ブロック行列の行列式,逆行列の公式と証明 | 高校数学の美しい物語 の公式を参考にすると

A1=(A111+A111A12A221OA111A111A12A221A221OA111A221)=(A111A111A12A221OA221)

解法2 素朴に解く場合

A11 および A22 がともに正則なので、それぞれの逆行列が存在するとする。

逆行列になるには

(A111A111A12A221OA221)

しかない

6.3#

次の問いに答えよ。

  1. An 次の正方行列とする。自然数 m に対して、 $(EnA)(En+A+A2++Am1)$

を計算せよ。

  1. べき零行列の定義を書け。

  2. An 次のべき零行列ならば、 EnA は正則であることを示せ。

  1. An 次の正方行列とする。自然数 m に対して、 $(EnA)(En+A+A2++Am1)$

を計算せよ。

行列もスカラーと同様に分配法則があるので

(EnA)(En+A+A2++Am1)=En+A+A2++Am1(A+A2++Am)=EnAm
  1. べき零行列の定義を書け。

n次正方行列Aについて、

Ak=O

となる自然数kが存在する行列

  1. An 次のべき零行列ならば、 EnA は正則であることを示せ。

正則なら逆行列が存在するため、任意のn次正方行列Xに対し

(EnA)X=En

が成り立つ。

Am=Oとし、X=(En+A+A2++Am1)とすると

(EnA)(En+A+A2++Am1)=EnAm=EnO=En

なのでEnAは正則

別の説明:https://mathlandscape.com/nilpotent-matrix/

|λEnA|=λn

になるので(なんで?)、λ=1なら

|EnA|=1

なのでEnAは正則

べき零行列の性質

  1. べき零行列は正則ではない

    • AB=Iの両辺をk乗したときAkBk=IkOBk=IとなりO=Iは矛盾するため

    • Ak=Oのとき|Ak|=|A|k=0|A|=0

  2. べき零行列は固有値がゼロ

    • Akx=λkxAk=Oλk=0λ=0

  3. べき零行列のトレースは0

    • 固有値の和はトレースと一致する

    • トレースは対角成分の和 → べき零行列は対角成分が0

  4. λIA(λ0)が正則

    • |λInAk|=λn

    • |λInAk|0ifλ0

(参考:https://mathlandscape.com/nilpotent-matrix/

参考#