練習問題メモ 22(内積空間)#
定義 22.1
\(V\) をベクトル空間とし、 \(\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}, \boldsymbol{z} \in V, c \in \mathbb{R}\) とする。任意の \(\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\) に対して実数 \(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle \in \mathbb{R}\) が定まり、次の \(1 \sim 4\) の条件を満たすとき、 \(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\) を \(\boldsymbol{x}\) と \(\boldsymbol{y}\) の 内積 、組 \((V,\langle, \rangle)\) を 内積空間 または計量ベクトル空間という。
\(\langle\boldsymbol{y}, \boldsymbol{x}\rangle=\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\)
\(\langle\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}, \boldsymbol{z}\rangle=\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{z}\rangle+\langle\boldsymbol{y}, \boldsymbol{z}\rangle\)
\(\langle c \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle=c\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\)
\(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{x}\rangle \geq 0\) で、 \(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{x}\rangle=0\) ならば \(\boldsymbol{x}=\mathbf{0}\)
問1#
\(f(t), g(t) \in \mathbb{R}[t]_n\) に対して、
とおく。このとき、 \(\left(\mathbb{R}[t]_n,\langle\rangle,\right)\) は内積空間であることを示せ。
\(\langle\boldsymbol{y}, \boldsymbol{x}\rangle=\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\)
\(\langle\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}, \boldsymbol{z}\rangle=\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{z}\rangle+\langle\boldsymbol{y}, \boldsymbol{z}\rangle\)
\(f'(t) \in \mathbb{R}[t]_n\)とする。
\(\langle c \boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle=c\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}\rangle\)
\(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{x}\rangle \geq 0\) で、 \(\langle\boldsymbol{x}, \boldsymbol{x}\rangle=0\) ならば \(\boldsymbol{x}=\mathbf{0}\)
\(f(t)\)の二乗の積分であるため、\(\langle f(t), f(t)\rangle \geq 0\)であり、\(\langle f(t), f(t)\rangle=0\)ならば\(f(t)=0\)
問2#
\(V\) を内積空間とする。定義 22.1 の内積の条件 \(1 \sim 3\) を用いて、任意の \(\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y}, \boldsymbol{z} \in V\) に対して、
が成り立つことを示せ。
問3#
\(\mathbb{R}^n\) の標準内積を考える。 \(A \in M_n(\mathbb{R})\) とすると、任意の \(\boldsymbol{x}, \boldsymbol{y} \in \mathbb{R}^n\) に対して、
が成り立つことを示せ。
抽象的な内積の定義のもとでの解き方はわからなかった
もし内積の具体的な計算に踏み込むことが許されるなら、つまり、\(\langle x, y \rangle := x^\top y\)とするなら
よって
が成り立つ
問4#
内積空間 \(V\) の部分空間 \(W\) に対して、 \(V\) の部分集合 \(W^{\perp}\) を
により定める。
\(W\) が \(V\) の部分空間であることの定義を書け。
\(W\) が \(V\) の部分空間であることと同値な 3 つの条件をかけ。
\(W^{\perp}\) は \(V\) の部分空間であることを示せ。
\(W \cup W^{\perp}=\{0\}\) が成り立つことを示せ。
\(\mathbb{R}^3\) の部分空間 \(W\) を
により定める。 \(\mathbb{R}^3\) の標準内積を考える時、 \(W^{\perp}\) を求めよ。
一般に、内積空間 \(V\) の部分空間 \(W\) を考えると、 \(V\) の任意の元は \(x \in W\) および \(\boldsymbol{y} \in W^{\perp}\) を用いて、 \(\boldsymbol{x}+\boldsymbol{y}\) と一意的に表されることがわかる。このとこから、 \(W^{\perp}\) を \(W\) の直交補空間という。また、 \(V\) は \(W\) と \(W^{\perp}\) の直交直和であるといい、
と表す。
\(W\) が \(V\) の部分空間であることの定義を書け。
\(W\)が空集合ではなく、和と定数倍について閉じていること。
\(W\) が \(V\) の部分空間であることと同値な 3 つの条件をかけ。
\(0 \in W\)
\(x,y\in W \implies w + y \in W\)
\(c\in \mathbb{R}, x\in W \implies cx \in W\)
\(W^{\perp}\) は \(V\) の部分空間であることを示せ。
(1) \(\boldsymbol{0} \in V\) であり、 \(\langle \boldsymbol{0}, y \rangle = 0\) のため \(\boldsymbol{0} \in W^\perp\)
(2) \(\boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2 \in W^{\perp}\) は、 \(\boldsymbol{y} \in W\)について、
を満たす。標準内積の定義より
であるため、\(\boldsymbol{x}_1 + \boldsymbol{x}_2 \in W^{\perp}\)
(3) \(\boldsymbol{x} \in W^{\perp}\) は、 \(\boldsymbol{y} \in W, c \in \mathbb{R}\)について、
をみたす。標準内積の定義より
のため、\(c \boldsymbol{x} \in W^{\perp}\)
よって、(1) ~ (3)より、\(W^\perp\)は\(V\)の部分空間である
\(W \cap W^{\perp}=\{0\}\) が成り立つことを示せ。
\(x\in W, x \in W^{\perp}\)とおく。積集合の定義より、\(W\cap W^\perp = \{ x | x\in W \land x \in W^{\perp} \}\)
直交補空間\(W^\perp\)の定義より、\(x \in W^\perp\)はすべての\(x \in W\)と直交するので、
を満たす。内積の条件(4) (正値性)より、これは \(x = 0\) である。
よって \(W\cap W^\perp = \{ 0 \}\)
\(\mathbb{R}^3\) の部分空間 \(W\) を
により定める。 \(\mathbb{R}^3\) の標準内積を考える時、 \(W^{\perp}\) を求めよ。
\(x \in W^\perp, y \in W\)について、
とおく。\(x\)は\(y\)と直交するベクトルであるため、
\(\forall c_1, c_2\in \mathbb{R}\)についてこれが0になるには
である必要がある。
よって\(x_1 = x_2 = x_3\)のため、\(c\in \mathbb{R}\)とおいて
であるから、