対角化の概要#
対角化可能#
\(V\)を\(\mathbb{R}\)上の有限次元ベクトル空間、\(F\)を\(V\)の線形変換とする。\(V\)の適当な基底\(\mathcal{B}\)をとれば、それに関する\(F\)の表現行列
\[
[F]_{\mathcal{B}}
\]
が対角行列となるとき、\(F\)は 対角化可能 であるという。
また、行列\(A\in M_n(\mathbb{R})\)に対して、適当な正則行列\(P\in M(\mathbb{R})\)をとり、
\[\begin{split}
P^{-1} A P
= \begin{pmatrix}
\lambda_1 & 0 & 0 & 0\\
0 & \lambda_2 & 0 & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & 0 & \lambda_n
\end{pmatrix}
\end{split}\]
となるとき、\(A\)は \(\mathbb{R}\) において対角化可能 であるという。
対角化できると何が嬉しいか#
例:\(n\)乗の計算がラクになる
\[\begin{split}
\begin{align}
(P^{-1} A P)^n
&= (P^{-1} A \underbrace{ P) (P^{-1} }_{I} A P) \cdots (P^{-1} A P)\\
&= P^{-1} A^n P
\end{align}
\end{split}\]
なので
\[\begin{split}
\begin{align}
A^n
&= P (P^{-1} A P)^n P^{-1}\\
&= P
\begin{pmatrix}
\lambda_1^n & 0 & 0 & 0\\
0 & \lambda_2^n & 0 & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & 0 & \lambda_p^n
\end{pmatrix}
P^{-1}
\end{align}
\end{split}\]
となる
例:2次曲線が「標準形」というシンプルな形になる
実数を係数とする \(x, y\) の 2 次方程式
\[
a x^2+2 b x y+c y^2+2 d x+2 e y+f=0
\]
は2次曲線とも呼ばれ、
\[\begin{split}
\left(\begin{array}{ll}
x & y
\end{array}\right)\left(\begin{array}{ll}
a & b \\
b & c
\end{array}\right)\binom{x}{y}+2\left(\begin{array}{ll}
d & e
\end{array}\right)\binom{x}{y}+f=0
\end{split}\]
と表される。ここで、行列 \(\left(\begin{array}{ll}a & b \\ b & c\end{array}\right)\) は対称行列であることに注意しよう。対称行列の直交行列による対角化を用いると、上記のような方程式を標準形という、よりわかりやすい式で表すことができる。例えば、楕円、双曲線、放物線の標準形 はそれぞれ
\[
\frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1, \quad \frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1, \quad y=a x^2
\]
で表される。ただし、 \(a, b\) は 0 ではない定数である。
対角化の方法#
一部の実行列 → 固有ベクトルで対角化可能
実対称行列 → 直交行列により対角化可能
上記で無理な場合 → ジョルダン標準形 という対角行列に近い形に簡約化