対角化の概要#

対角化可能#

\(V\)\(\mathbb{R}\)上の有限次元ベクトル空間、\(F\)\(V\)の線形変換とする。\(V\)の適当な基底\(\mathcal{B}\)をとれば、それに関する\(F\)の表現行列

\[ [F]_{\mathcal{B}} \]

が対角行列となるとき、\(F\)対角化可能 であるという。

また、行列\(A\in M_n(\mathbb{R})\)に対して、適当な正則行列\(P\in M(\mathbb{R})\)をとり、

\[\begin{split} P^{-1} A P = \begin{pmatrix} \lambda_1 & 0 & 0 & 0\\ 0 & \lambda_2 & 0 & 0\\ 0 & 0 & \ddots & 0\\ 0 & 0 & 0 & \lambda_n \end{pmatrix} \end{split}\]

となるとき、\(A\)\(\mathbb{R}\) において対角化可能 であるという。

対角化できると何が嬉しいか#

例:\(n\)乗の計算がラクになる
\[\begin{split} \begin{align} (P^{-1} A P)^n &= (P^{-1} A \underbrace{ P) (P^{-1} }_{I} A P) \cdots (P^{-1} A P)\\ &= P^{-1} A^n P \end{align} \end{split}\]

なので

\[\begin{split} \begin{align} A^n &= P (P^{-1} A P)^n P^{-1}\\ &= P \begin{pmatrix} \lambda_1^n & 0 & 0 & 0\\ 0 & \lambda_2^n & 0 & 0\\ 0 & 0 & \ddots & 0\\ 0 & 0 & 0 & \lambda_p^n \end{pmatrix} P^{-1} \end{align} \end{split}\]

となる

(参考:【大学数学】線形代数入門⑬(対角化:重解がない場合)【線形代数】 - YouTube

例:2次曲線が「標準形」というシンプルな形になる

実数を係数とする \(x, y\) の 2 次方程式

\[ a x^2+2 b x y+c y^2+2 d x+2 e y+f=0 \]

は2次曲線とも呼ばれ、

\[\begin{split} \left(\begin{array}{ll} x & y \end{array}\right)\left(\begin{array}{ll} a & b \\ b & c \end{array}\right)\binom{x}{y}+2\left(\begin{array}{ll} d & e \end{array}\right)\binom{x}{y}+f=0 \end{split}\]

と表される。ここで、行列 \(\left(\begin{array}{ll}a & b \\ b & c\end{array}\right)\) は対称行列であることに注意しよう。対称行列の直交行列による対角化を用いると、上記のような方程式を標準形という、よりわかりやすい式で表すことができる。例えば、楕円、双曲線、放物線の標準形 はそれぞれ

\[ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1, \quad \frac{x^2}{a^2}-\frac{y^2}{b^2}=1, \quad y=a x^2 \]

で表される。ただし、 \(a, b\) は 0 ではない定数である。

対角化の方法#

  • 一部の実行列 → 固有ベクトルで対角化可能

  • 実対称行列 → 直交行列により対角化可能

  • 上記で無理な場合 → ジョルダン標準形 という対角行列に近い形に簡約化