経済学概論#

経済学とは、経済主体が希少資源の配分をどう選択するか、またその選択が社会にどう影響を及ぼすのかを研究する学問である。

『アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学』

事実解明的経済学と規範的経済学#

経済分析は以下の2点を行う

  1. 人々が実際にしていること(事実解明的経済学 positive economics)

  2. 人々がするべきことを提言する(規範的経済学 normative economics)

経済学の3つの重要な概念#

  1. 最適化:人は、実現可能な最善の選択肢を選ぼうとする(と仮定することで複雑な社会をモデル化する)

  2. 均衡:経済システムは均衡に向かう傾向がある。均衡とは、そこから行動を変えることで便益を得る人はだれも居ない状態のこと

  3. 経験主義:データを使って実証する

需要と供給#

需要曲線#

買い手が購入したい財やサービスの量を**需要量(quantity demanded)**という。

価格以外の**その他すべてを一定として(holding all else equal; ceteris paribus)価格が変化したときの個人や市場の需要量の変化をグラフにしたものを需要曲線(demand curve)**という。個々人の需要曲線の合計値が市場の需要曲線となる。

多くの場合、財の消費が多くなるにつれて追加の1単位の財に対する支払い意思額(willingness to pay;追加の1単位に対して買い手が支払う意志のある最大の金額)は減少していく。このことを限界便益低減(diminishing marginal benefit)という。

需要曲線のシフト#

次の主要な変数が変わるとき、需要曲線はシフトする

  • 選好

    • 例:環境問題への懸念がハイブリッド車への購入を促す

  • 所得または富

    • 例:学生から社会人になって懐に余裕が出て、友達とのランチがサイゼリヤではなく高級感のあるイタリアンレストランになる

    • 正常財の場合、所得の増加は需要曲線を右にシフトさせる

    • 劣等財の場合、所得の増加は需要曲線を左にシフトさせる(例:缶詰加工肉ではなく生鮮食品を、マーガリンではなくバターを買う)

  • 関連する財の利用可能性と価格

    • 一方の財の価格の低下が、もう一方の財の需要曲線を左にシフトさせるとき、2つの財は代替財の関係にあるという

      • 例:公共交通機関の値下げとガソリン需要

    • 一方の財の価格の低下が、もう一方の財の需要曲線を右にシフトさせるとき、2つの財は補完財の関係にあるという

      • 例:スキー場の値下げとガソリン需要

  • 買い手の数と規模

    • 買い手の数が増えると需要曲線は右にシフトする

  • 将来に対する買い手の予想

    • 将来不安で貯蓄が進むと需要は減り、奢侈品の需要曲線を左にシフトさせる

供給曲線#

売り手が供給したいと思う財やサービスの量は供給量(quantity supplied)と呼ばれる。

価格と供給量の関係は供給曲線(supply curve)という。

財を追加的に1単位売るために売り手が受け入れる最小の金額を受け入れ意思額(willingness to accept)という。最適化行動をとる企業にとって、受入意思額は生産の限界費用と等しい。

供給曲線のシフト#

以下の4つの要因がある

  • 財を生産するために使用する投入物の価格

  • 財を生産するために使用する技術

  • 売り手の数と規模

  • 将来に対する売り手の予想

均衡#

需要曲線と供給曲線が交わる点を競争均衡(competitive equilibrium)と呼ぶ。この点で価格と数量が一致し、それぞれ競争均衡価格、競争均衡量と呼ぶ。

参考文献#

  • ダロンほか (2019). アセモグル/レイブソン/リスト ミクロ経済学. 東洋経済新報社.