練習問題メモ 20(固有値と固有ベクトル その2-一般の線形変換の場合-)#
問1#
写像 \(\Psi: \mathbb{R}[t]_2 \rightarrow \mathbb{R}[t]_2\) を
により定めると、 \(\Psi\) は \(\mathbb{R}[t]_2\) の線形変換を定めることがわかる。 \(\mathbb{R}[t]_2\) の基底 \(\{1, t, t^2\}\) に関する \(\Psi\) の表現行列、 \(\Psi\) の固有値、 \(\Psi\) の各固有値に対する固有空間を求めよ。
Tip
情報整理
多項式:\(\mathbb{R}[t]_2 = \{ a_2 t^2 + a_1 t + a_0 \mid a_2,a_1,a_0 \in \mathbb{R}\}\)
基底:\(\{1, t, t^2\}\) → これらの線形結合で\(\mathbb{R}[t]_2\)を生成するため
\(\Psi(1)\)のとき、\(\Psi(f(t))\)の\(f(t)\)を1とおいている、すなわち\(f(t) := 1\)と定義している。\(f(t)\)は\(t\)がなんであれ常に1の定数となっていると解釈できる → \(f(-t) = 1\)
\(\Psi(t)\)のとき、同様に\(f(t) := t\)とおいている。今度は\(f(t)\)は\(t\)の関数なので、\(f(-t) = -t\)。あるいは別の解釈としては、\(f(t)\in\mathbb{R}[t]_2\)は線形関数なので線形性\(\forall k \in \mathbb{R}, f(k\cdot t) = k \cdot f(t)\)により、\(f(-t) = -t\)。
\(\Psi(t^2)\)のとき、\(f(t) := t^2\) → \(f(-t) = (-t)^2 = t^2\)
\(\mathbb{R}[t]_2\) の基底 \(\left\{1, t, t^2\right\}\) に関する \(\Psi\) の表現行列
表現行列は
を満たす行列\(A\)のこと(ややこしいが、\(f(t)\)も\(t\)も\(\mathbb{R}[t]_2\)の元なので)。
より、
なので、あてはまるように\(A\)を求める
なので、表現行列は
\(\Psi\) の固有値
行列表現の固有値でよさそう?
を満たす\(\lambda\)は
\(\Psi\) の各固有値に対する固有空間
\(\lambda = -1\)の場合、
は
より
から、\(x_1 = -2 x_0, x_2 = 0\)
固有空間\(V(\lambda)\)は
\(\lambda = 1\)の場合、
は
より
から、\(x_1 = x_2 = 0\)、情報がない\(x_0\)は未知
固有空間\(V(\lambda)\)は
import sympy as sp
# Define the matrix
matrix = sp.Matrix([
[1, 1, 0],
[0, -1, 2],
[0, 0, 1]
])
# Calculate the eigenvalues
eigenvalues = matrix.eigenvals()
print("λ=", eigenvalues.keys())
print("x=", matrix.eigenvects())
λ= dict_keys([1, -1])
x= [(-1, 1, [Matrix([
[-1/2],
[ 1],
[ 0]])]), (1, 2, [Matrix([
[1],
[0],
[0]])])]
問2#
\(M_2(\mathbb{R})\) の部分集合 \(W\) を
により定める。
\(W\) は \(M_2(\mathbb{R})\) の部分空間であることを示せ。
\(E_1, E_2 \in W\) を
により定める。 \(\left\{E_1, E_2\right\}\) は \(W\) の基底であることを示せ。
\(W\) は \(M_2(\mathbb{R})\) の部分空間であることを示せ。
(1) \(x_1, x_2 \in \mathbb{R}\)はともに0になりうるため、\(O\in W\)
(2) \(X, Y \in W\)とする。\(X + Y\)の各要素は\(\mathbb{R}\)に含まれるため、\(X+Y\in W\)
(3) \(X \in W, c\in\mathbb{R}\)とする。\(c X\)の各要素は\(\mathbb{R}\)に含まれるため、\(cX \in W\)
(1)~(3)より、部分空間の定義を満たすため、\(W\)は部分空間である
\(\left\{E_1, E_2\right\}\) は \(W\) の基底であることを示せ。
Tip
ベクトル\(v_1, v_2 \in V\)が\(V\)の基底であるとは、
線形独立であること、すなわち\(c_1 v_1 + c_2 v_2 = 0, \ (c_1, c_2\in \mathbb{R})\)となるのは\(c_1=c_2=0\)のときのみ
\(V\)を生成する。つまり、他の\(v\in V\)を\(c_1 v_1 + c_2 v_2\)で表すことができる
\(x_1, x_2 \in \mathbb{R}\)とする。
とおくと、
より、
となる。よって1次独立である。
また、\(c_1, c_2 \in \mathbb{R}\)について、
\(c_1, c_2 \in \mathbb{R}\)のため、\(x_1, x_2 \in \mathbb{R}\)についての
を\(E_1,E_2\)の線形結合によって表現できる。よって\(E_1,E_2\)は\(W\)を生成する。
したがって、\(E_1,E_2\)は\(W\)の基底である
問3#
写像 \(\Psi: \mathbb{R}[t]_2 \rightarrow \mathbb{R}[t]_2\) を
により定めると、 \(\Psi\) は \(\mathbb{R}[t]_2\) の線形変換を定めることがわかる。 \(\mathbb{R}[t]_2\) の基底 \(\left\{1, t, t^2\right\}\) に関する \(\Psi\) の表現行列、 \(\Psi\) の固有値を求めよ。
\(\mathbb{R}[t]_2\) の基底 \(\left\{1, t, t^2\right\}\) に関する \(\Psi\) の表現行列
表現行列は
を満たす行列\(A\)のこと(ややこしいが、\(f(t)\)も\(t\)も\(\mathbb{R}[t]_2\)の元なので)。
なので、表現行列は
\(\Psi\) の固有値
固有方程式
を解くと、\(\lambda = 2, 3\)
import sympy as sp
# Define the matrix
matrix = sp.Matrix([
[3, 1/2, 1/3],
[0, 2, 0],
[0, 0, 2]
])
# Calculate the eigenvalues
eigenvalues = matrix.eigenvals()
print("λ=", eigenvalues.keys())
print("x=", matrix.eigenvects())
λ= dict_keys([3.00000000000000, 2.00000000000000])
x= [(3.00000000000000, 1, [Matrix([
[1.0],
[ 0],
[ 0]])]), (2.00000000000000, 1, [Matrix([
[-0.5],
[ 1.0],
[ 0]])]), (2.00000000000000, 1, [Matrix([
[-0.333333333333333],
[ 0],
[ 1.0]])])]
問4#
\(f\) をベクトル空間 \(V\) の線形変換とし、次の 2 つの命題 \(P, Q\) を考える。
\(P: f\) は同型写像、すなわち、 \(f\) は全単射である。【 \(\rightarrow\) 問 17.4】
\(Q: f\) は \(0\) を固有値として持たない。
\(P\) と \(Q\) は同値であることを次の文章の \(\square\) を埋めることにより示せ。
前提となる定理1 正則性と同値な条件
\(A\) を \(n\) 次の正方行列とすると、次の \(1 \sim\) 5 は互いに同値である。
\(A\) は正則である。
\(\operatorname{rank} A=n\)
\(A\) の階数標準形は単位行列である。
同次連立 1 次方程式 \(A \boldsymbol{x}=\mathbf{0}\) の解は自明な解のみである。
任意の \(n\) 次の列ベクトル \(\boldsymbol{b}\) に対して、連立 1 次方程式 \(\boldsymbol{A x}=\boldsymbol{b}\) の解が一意的 に存在する。
[証明]
線形変換 \(f\) の \([1]\) 行列を考えることにより、正方行列 \(A\) に対する次の命題 \(P^{\prime}\) と \(Q^{\prime}\) が同値であることを示せばよい。
\(P^{\prime} \Longrightarrow Q^{\prime}\) : 背理法で示す。 \(A\) を \([2]\) 行列とし、 0 を固有値として持つと仮定する。 \(x\) を固有値 0 に対する \(A\) の固有ベクトルとすると、 \(A \boldsymbol{x}=[3]\)。 \(A\) は \([2]\) なので、逆行列 \(A^{-1}\) が存在し、両辺に左から \([4]\) を掛けると、 \(\boldsymbol{x} = [5]\) 。固有ベクトルの定義 より、 \(x \neq [5]\) なので、これは矛盾である。よって、\([2]\)行列は 0 を固有値として持たない。
\(Q^{\prime} \Longrightarrow P^{\prime}\) : 対偶を示す。 \(A\) が \([2]\) でないと仮定すると、定理1より、同次連立 1 次方程式 \(A x=0\) は \([6]\) でない解 \(x\) を持つ。このとき、 \(x\) は固有値 0 に対する \(A\) の固有ベクトルである。よって、 \(A\) は 0 を固有値として持つため、命題 \(Q^{\prime} \Longrightarrow P^{\prime}\) の対偶が成り立つ。したがって、命題 \(Q^{\prime} \Longrightarrow P^{\prime}\) も成り立つ。
\([1] =\)表現
\([2] =\)正則
\([3] =0\)
\([4] = A^{-1}\)
\([5] = 0\)
\([6] =\)自明