練習問題メモ 15(基底と次元)#
問1#
同次連立1次方程式
の解空間の次元と1組の基本解を求めよ。
1. 解の次元
前進消去により
と変形できるため\(\operatorname{rank} A = 2\)である。
\(m\times n\)行列\(A\)の解の次元は\(m - \operatorname{rank} A\)であるため、\(4 - 2 = 2\)
2. 1組の基本解
解空間の基底を基本解という。
前進消去した係数行列を使った連立方程式は
となる。
これを解くと
一般解は
未知変数\(x_3, x_4\)と係数の線形結合の形にして、解空間の基底(基本解)を求める
基底(基本解)は
問2#
は\(\mathbb{R}^3\)の基底であることを示せ
\(A = (a_1, a_2, a_3)\)とすると、その行列式は
行列式がゼロでないため、ランク落ちがなく\(a_1,a_2,a_3\)は基底である
問3#
\(a \in \mathbb{R}\) とし、 \(\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \boldsymbol{a}_3, \boldsymbol{a}_4 \in \mathbb{R}^4\) を
により定める。
\(\mathbb{R}^4\) が \(\boldsymbol{a}_1, \boldsymbol{a}_2, \boldsymbol{a}_3, \boldsymbol{a}_4\) で 生成されない ときの \(a\) の値を求めよ。
「生成されない」というのは\(a_1,\dots,a_4\)が基底でないことなので、\(A=(a_1,\dots, a_4)\)が\(|A|= 0\)のときの\(a\)を探る。
余因子展開してもよいが、行列基本変形で簡単に解くこともできる
4行目を1~3行目から引いて
1~3列目を4列目に足して
三角行列の対角成分の積が行列式に等しいため
よって
問4#
実数を成分とする \(n\) 次の正方行列全体からなるベクトル空間 \(M_n(\mathbb{R})\) の部分集合 \(W\) を次の \(1 \sim 4\) により定めると、 \(W\) は \(M_n(\mathbb{R})\) の部分空間となる。それぞれの場合 について \(W\) の次元と 1 組の基底を求めよ。
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X\right.\) は対称行列 \(\}\)
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X\right.\) は交代行列 \(\}\)
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X\right.\) は上三角行列 \(\}\)
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid \operatorname{tr} X=0\right\}(\operatorname{tr} X\) は \(X\) のトレース)
回答例
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X\right.\) は対称行列 \(\}\)
\(x_{ij}\)を行列\(X\in W\)の\((i,j)\)成分、\(E_{ij}\)を行列単位(\((i,j)\)要素だけが1、それ以外が0の行列)とする。 対称行列の成分は \(x_{i j}=x_{j i}(i, j=1,2, \cdots, n)\) をみたすので
\(1 \leq i<j \leq n\)を満たす自然数\(i,j\)の組\((i,j)\)の個数は
なので、 \(\sum_{1 \leq i<j \leq n}\) は \(\frac{n(n-1)}{2}\) 個の項の和である。よって、 \(W\) の次元は
また、 \(\left\{E_{i i}(i=1,2, \cdots, n), E_{i j}+E_{j i}(1 \leq i<j \leq n)\right\}\) は \(W\) の基底である。
\(W=\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X は交代行列 \}\)
交代行列は
を満たす行列であり、対角成分は0のため、
\(x_{ij}\)を行列\(X\in W\)の\((i,j)\)成分、\(E_{ij}\)を行列単位とすると
となる。
\(\sum_{1 \leq i<j \leq n}\) は \(\frac{n(n-1)}{2}\) 個の項の和であるため、\(W\)の次元は
である。
また、\(W\)の基底は\(\left\{ E_{i j}-E_{j i}(1 \leq i<j \leq n)\right\}\) である。
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid X\right.\) は上三角行列 \(\}\)
上三角行列は、\(x_{ij}\)を行列\(X\in W\)の\((i,j)\)成分、\(E_{ij}\)を行列単位とすると
となる。
\(\sum_{1 \leq i \leq j \leq n}\) は \(\frac{n(n+1)}{2}\) 個の項の和であるため、\(W\)の次元は
である。
また、\(W\)の基底は\(\left\{ E_{ij}(1 \leq i \leq j \leq n)\right\}\) である。
import numpy as np
X = np.zeros((5, 5))
n, m = X.shape
for i in range(n):
for j in range(i, n):
X[i, j] = 1
X
array([[1., 1., 1., 1., 1.],
[0., 1., 1., 1., 1.],
[0., 0., 1., 1., 1.],
[0., 0., 0., 1., 1.],
[0., 0., 0., 0., 1.]])
\(W=\left\{X \in M_n(\mathbb{R}) \mid \operatorname{tr} X=0\right\}(\operatorname{tr} X\) は \(X\) のトレース)
対角成分の和が0になればいいだけなので、対角要素n個のうち1つが残りのn-1を打ち消すようになっていればいいことになる。
対角成分の和がゼロとなる\(n\)次正方行列\(X\)は、\(x_{ij}\)を行列\(X\in W\)の\((i,j)\)成分、\(E_{ij}\)を行列単位とすると
と表すことができる。
\(\sum_{1\leq i, j \leq n, \ i \neq j }\) は \(n\times n - n = n(n-1)\)個の項の和であり、\(\sum_{i=1}^{n-1}\)は\(n-1\)個のため(\(n\times n\)行列の1成分以外に対応するため)
\(W\)の次元は
であり、基底は
である。
import numpy as np
n = 3
def E(i, j):
E = np.zeros((n, n))
E[i, j] = 1
return E
X = np.zeros((n, n))
for i in range(n-1):
X += (E(i, i) - E(n-1, n-1))
print(f"{X}\ntr(X)={np.trace(X):.0f}")
[[ 1. 0. 0.]
[ 0. 1. 0.]
[ 0. 0. -2.]]
tr(X)=0