練習問題メモ 15(基底と次元)

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練習問題メモ 15(基底と次元)#

問1#

同次連立1次方程式

(101121313251)(x1x2x3x4)=0

の解空間の次元と1組の基本解を求めよ。

1. 解の次元

前進消去により

(101101110000)

と変形できるためrankA=2である。

m×n行列Aの解の次元はmrankAであるため、42=2

2. 1組の基本解

解空間の基底を基本解という。

前進消去した係数行列を使った連立方程式は

{x1+x3+x4=0x2+x3x4=0

となる。

これを解くと

x1=x3x4x2=x3+x4

一般解は

(x1x2x3x4)=(x3x4x3+x4x3x4)

未知変数x3,x4と係数の線形結合の形にして、解空間の基底(基本解)を求める

(x1x2x3x4)=x3(1110)+x4(1101)

基底(基本解)は

{(1110),(1101)}

問2#

a1=(cosθsinθ0),a2=(sinθcosθ0),a3=(001)

R3の基底であることを示せ

A=(a1,a2,a3)とすると、その行列式は

|A|=1×|cosθsinθsinθcosθ|=cos2θ+sin2θ=1

行列式がゼロでないため、ランク落ちがなくa1,a2,a3は基底である

問3#

aR とし、 a1,a2,a3,a4R4

a1=(a111),a2=(1a11),a3=(11a1),a4=(111a)

により定める。

R4a1,a2,a3,a4生成されない ときの a の値を求めよ。

「生成されない」というのはa1,,a4が基底でないことなので、A=(a1,,a4)|A|=0のときのaを探る。

|A|=|a1111a1111a1111a|

余因子展開してもよいが、行列基本変形で簡単に解くこともできる

4行目を1~3行目から引いて

|a1001a0a101a00a11a111a|

1~3列目を4列目に足して

|a10000a10000a10111a+3|

三角行列の対角成分の積が行列式に等しいため

|A|=(a1)3(a+3)

よって

a=3,1

問4#

実数を成分とする n 次の正方行列全体からなるベクトル空間 Mn(R) の部分集合 W を次の 14 により定めると、 WMn(R) の部分空間となる。それぞれの場合 について W の次元と 1 組の基底を求めよ。

  1. W={XMn(R)X は対称行列 }

  2. W={XMn(R)X は交代行列 }

  3. W={XMn(R)X は上三角行列 }

  4. W={XMn(R)trX=0}(trXX のトレース)

回答例

  1. W={XMn(R)X は対称行列 }

xijを行列XW(i,j)成分、Eijを行列単位((i,j)要素だけが1、それ以外が0の行列)とする。 対称行列の成分は xij=xji(i,j=1,2,,n) をみたすので

X=i=1nxiiEii+1i<jnxij(Eij+Eji)

1i<jnを満たす自然数i,jの組(i,j)の個数は

1+2++(n+1)=n(n1)2

なので、 1i<jnn(n1)2 個の項の和である。よって、 W の次元は

dimW=n+n(n1)2=n(n+1)2

また、 {Eii(i=1,2,,n),Eij+Eji(1i<jn)}W の基底である。

  1. W={XMn(R)X}

交代行列は

A=A(ai,j=aj,i(i,j))

を満たす行列であり、対角成分は0のため、

xijを行列XW(i,j)成分、Eijを行列単位とすると

X=1i<jnxij(EijEji)

となる。

1i<jnn(n1)2 個の項の和であるため、Wの次元は

dimW=n(n1)2

である。

また、Wの基底は{EijEji(1i<jn)} である。

  1. W={XMn(R)X は上三角行列 }

上三角行列は、xijを行列XW(i,j)成分、Eijを行列単位とすると

X=1ijnxijEij

となる。

1ijnn(n+1)2 個の項の和であるため、Wの次元は

dimW=n(n+1)2

である。

また、Wの基底は{Eij(1ijn)} である。

import numpy as np

X = np.zeros((5, 5))
n, m = X.shape
for i in range(n):
    for j in range(i, n):
        X[i, j] = 1
X
array([[1., 1., 1., 1., 1.],
       [0., 1., 1., 1., 1.],
       [0., 0., 1., 1., 1.],
       [0., 0., 0., 1., 1.],
       [0., 0., 0., 0., 1.]])
  1. W={XMn(R)trX=0}(trXX のトレース)

対角成分の和が0になればいいだけなので、対角要素n個のうち1つが残りのn-1を打ち消すようになっていればいいことになる。

対角成分の和がゼロとなるn次正方行列Xは、xijを行列XW(i,j)成分、Eijを行列単位とすると

X=1i,jn, ijxijEij+i=1n1xii(EiiEnn)

と表すことができる。

1i,jn, ijn×nn=n(n1)個の項の和であり、i=1n1n1個のため(n×n行列の1成分以外に対応するため)

Wの次元は

dimW=n21

であり、基底は

{Eij(1i,jnij),EiiEnn(i=1,2,,n1)}

である。

import numpy as np
n = 3
def E(i, j):
    E = np.zeros((n, n))
    E[i, j] = 1
    return E

X = np.zeros((n, n))
for i in range(n-1):
    X += (E(i, i) - E(n-1, n-1))
print(f"{X}\ntr(X)={np.trace(X):.0f}")
[[ 1.  0.  0.]
 [ 0.  1.  0.]
 [ 0.  0. -2.]]
tr(X)=0