偏微分#

2変数の関数#

極限#

定義(極限)

2つの変数x,yによる関数f(x,y)があるとする。点P(x,y)が点A(a,b)と一致することなく点Aに近づくとする。このとき、関数f(x,y)の値が、その近づき方によらず同じ1つの値cに近づくならば、f(x,y)には 極限 が存在して、その 極限値cである、あるいは「f(x,y)c収束する」といい

f(x,y)c(xa,yb),limxa,ybf(x,y)=c,limPAf(x,y)=c,lim(x,y)(a,b)f(x,y)=c

などと表す。

例:近づき方が異なるとき、極限は存在しない

関数 f(x,y)=x2x2+y2 において, x0,y0 の極限を調べる。

この関数の定義域は全平面から原点Oを除外して得られる領域である。 点P(x,y)が2つの方法でOに近づくとする。

(1) x軸に沿って原点に近づく場合

f(x,0)=x2/(x2+0)=1なので

limx0f(x,0)=limx01=1

(2) y軸に沿って原点に近づく場合

f(0,y)=0/(0+y2)=0なので

limy0f(0,y)=limy00=0

したがって、原点への近づき方によって異なる値をとるため、極限値limP0f(x,y)は存在しない

連続#

定義(連続)

A(a,b)の近くで定義されている関数z=f(x,y)について、次の3つの条件を満たすとき、f(x,y)A(a,b)において 連続 であるという。

  1. f(a,b) が定義されている

  2. limxaybf(x,y) が存在する

  3. limxaybf(x,y)=f(a,b)

Q. 関数

f(x,y)={xyx2+y2((x,y)(0,0))0((x,y)=(0,0))

の原点(0,0)での連続性を調べよ。

f(0,0)は定義されている。

f(x,y)x=0あるいはy=0のとき常に0であるから、x軸やy軸に沿って原点に近づくとき

limx0f(x,0)=0=f(0,0)limy0f(0,y)=0=f(0,0)

しかし直線y=mx(m0)に沿って原点に近づくと

limx0f(x,mx)=limx0mx2x2+m2x2=limx0m1+m2=m1+m2f(0,0)

となり、mの値によって(原点への近づけ方によって)異なる値になるため極限は存在せず、連続でもない

偏微分#

関数z=f(x,y)があるとする。yを一定としてxを変動させることを考えると、f(x,y)xだけの関数になるので、その導関数

f(x,y)x=limΔx0f(x+Δx,y)f(x,y)Δx

が存在すれば、偏微分可能 であるという。またfxf(x,y)xに関する 偏導関数 (partial derivative)という。

偏微分の記号

f(x,y)xに関する偏導関数は、以下のような記号で表される。

f(x,y)x,fx,fx(x,y),zx,zx,f(x,y)x|y

高階の偏微分#

2f(x,y)x2=x(f(x,y)x)=fxx(x,y)2f(x,y)yx=y(f(x,y)x)=fxy(x,y)2f(x,y)y2=y(f(x,y)y)=fyy(x,y)2f(x,y)xy=x(f(x,y)y)=fyx(x,y)

定理:偏微分の順序を交換しても偏導関数は変わらない

fxyfyxが連続ならば、

fxy=fyx

陰関数の微分#

y=f(x)のように、xに対応するyの具体的な表式が示されているとき、yx陽関数 (explicit function)であるという。

F(x,y)=0のように関係式として定められているだけのとき、yx陰関数 (inplicit function)であるという。

F(x,y)=0のとき、yによる偏導関数FyFy0ならば

dydx=Fx(x,y)Fy(x,y)=F(x,y)/xF(x,y)/y
証明

yx の関数だから、 dy=dydxdx

またF(x,y)=0だから、dF=0

したがって

dF=Fxdx+Fydy=(Fx+Fydydx)dx=0

よって

Fx+Fydydx=0
例題
3x2+4y25z2=20

zxzyを求めよ。

F(x,y,z):=3x2+4y25z220=0

とおく。

Fx=6x,Fy=8y,Fz=10z

であり、Fz0のため、定理

zx=F/xF/z,zy=F/yF/z

より

zx=F/xF/z=6x10z=3x5zzy=F/yF/z=8y10z=4y5z