ジョルダン標準形

ジョルダン標準形#

ジョルダン標準形は、対角化できない行列を対角に近い簡略化した状態に変換する方法

\(2 \times 2\)のジョルダン標準形#

\(2\times 2\)行列\(A\)は、可逆な行列\(P\)を用いて\(P^{-1} A P\)を作ると、必ず次のいずれかにすることができる

\[\begin{split} \left(\begin{array}{cc} \lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_2 \end{array}\right), \quad\left(\begin{array}{cc} \lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_1 \end{array}\right), \quad\left(\begin{array}{cc} \lambda_1 & 1 \\ 0 & \lambda_1 \end{array}\right) \end{split}\]

ただし、\(\lambda_1 \neq \lambda_2\)である。これらの3つの行列が\(2\times 2\)行列の ジョルダン標準形(Jordan normal form) である。

対角化の際に重要だったのは固有値問題である。固有方程式\(|A-\lambda I| = 0\)の解\(\lambda_1, \lambda_2\)が固有値である。

解が\(\lambda_1 \neq \lambda_2\)である(重根でない)場合、異なる固有値に属する固有ベクトルは1次独立なので、固有ベクトルを列ベクトルとして並べた行列\(P\)は可逆であり、行列\(A\)\(P\)によって

\[\begin{split} P^{-1} A P=\left(\begin{array}{ll} \lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_2 \end{array}\right) \end{split}\]

と対角化される。これはジョルダン標準形の1番目のものである。

解が\(\lambda_1 = \lambda_2\)である(重根の)場合で最も単純な例は

\[\begin{split} A=\left(\begin{array}{cc} \lambda_1 & 0 \\ 0 & \lambda_1 \end{array}\right) \end{split}\]

で、この場合はすでに対角化されている。(単位行列\(I\)\(P\)とおけば対角化できる、とも言える)。この場合はジョルダン標準形の2番目のものである。

解が\(\lambda_1 = \lambda_2\)である(重根の)場合で、上記のようなものとは違う場合(上記の例は\(A-\lambda I=O\)となるので、今度は\(A-\lambda I \neq O\)の場合)を考える。

例えば

\[\begin{split} A=\left(\begin{array}{cc} 1 & 2\\ 0 & 1 \end{array}\right) \end{split}\]

は1次独立な固有ベクトルが1個しかなく、対角化ができない。この場合でもジョルダン標準形の3番目の形に変換する可逆行列\(P\)を求める事ができる。