練習問題メモ 19(固有値と固有ベクトル その1-正方行列の定める線形変換の場合-)

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練習問題メモ 19(固有値と固有ベクトル その1-正方行列の定める線形変換の場合-)#

問1#

AMn(R),λA の固有値とする。 Rn の部分集合

W~(λ)={xRn ある自然数 k に対して (λEA)kx=0}

Rn の部分空間であることを示せ。なお、 W~(λ) を固有値 λ に対する A広域固有空間 または 一般固有空間 という。

(1) ゼロベクトルを含む

(λEA)k0=0

であり、0Rnであるため

0W~(λ)

広義固有空間の求め方【例題】 など、広義固有空間の定義として「零を含む」とする流儀もあるようだが、今回はxが固有ベクトル(x0)と指定されてないので0Rnゆえ零を含むといえる)

(2) 和について閉じている

x1,x2W~(λ)について、ある自然数k,Nが存在し

(λEA)kx1=0(λEA)x2=0

mNmk,mとおくと

(λEA)m(x1+x2)=(λEA)mx1+(λEA)mx2=0

よって

x1+x2W~(λ)

(3) 定数倍について閉じている

cR,xW~(λ),(λEA)kcx=c{(λEA)kx}=c{0}=0

よって

cxW~(λ)

(1),(2),(3)を満たすため、W~(λ)Rnの部分空間

問2#

次の1~3の正方行列の固有値と固有値に対する 1 つの固有ベクトルおよび固有空間を求めよ。

  1. (1122)

  2. (120222023)

  3. (211121112)

  1. (1122)

  1. 固有値を求める

(AλE)x=0が非自明な解x0を持つためにはdet(AλE)=0である必要があるため、そのようなλを求める

det(AλE)=det(1λ122λ)=(1λ)(2λ)2=23λ+λ22=(λ3)λ=0

なので、λ=0,3

  1. 固有ベクトルと固有空間を求める

λ=0の場合:

Ax=λx

(1122)(x1x2)=λ(x1x2)

であり

{x1+x2=02x1+2x2=0

となる。

これを解くと

x1=x2x2=x1

つまり

x=(x1x1)

であるため、未知の数cRをもちいて

x=c(11)

と表すことができる。そのため、例えば (11)は固有値0に属する固有ベクトルのひとつになる。

固有空間は

V(0)={c(11)|cR}

となる。

λ=3の場合:

Ax=λx

{x1+x2=3x12x1+2x2=3x2

となる。

これを解くと

x2=2x1

であるため、

x=(x12x1)=c(12),cR

となり、例えば(12)が固有値3の固有ベクトルの一つである。

固有空間V(λ)

V(3)={c(12)|cR}

となる。

  1. (120222023)

  1. 固有値を求める

det(AλE)=det(1λ2022λ2023λ)=(1λ)(2λ)(3λ)4(1λ)4(3λ)=(23λ+λ2)(3λ)4+4λ12+4λ=(23λ+λ2)(3λ)16+8λ=69λ+3λ22λ+3λ2λ316+8λ=λ3+6λ23λ10

よって

(λ5)(λ2)(λ+1)=0

なので、λ=1,2,5

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import sympy as sp

l = sp.Symbol("l")
M = sp.Matrix([
    [1-l, 2, 0],
    [2, 2-l, 2],
    [0, 2, 3-l],
])
det = M.det()
print(f"{det=}")

print(f"factor: {sp.factor(det)}")

from sympy.solvers import solve
print(f"λ={solve(det)}")
Hide code cell output
det=-l**3 + 6*l**2 - 3*l - 10
factor: -(l - 5)*(l - 2)*(l + 1)
λ=[-1, 2, 5]

λ=1の場合

(AλE)x=0=(1+12022+12023+1)(x1x2x3)=0
{2x1+2x2=02x1+3x2+2x3=02x2+4x3=0

1行目の式より x1=x2 なので、 2行目の式に代入して

2x2+3x2+2x3=0x2=2x3x3=12x2

よって

(x2x212x2)=x2(1112)

なので

x=c(1112),cR

固有ベクトルのひとつは(1112)となる

固有空間V(λ)

V(1)={c(1112)|cR}

λ=2の場合

(AλE)x=0(122022220232)(x1x2x3)=0(120202021)(x1x2x3)=0
{x1+2x2=02x1+2x3=02x2+x3=0

これを解くと

x1=2x2x3=2x2

よって

(2x2x22x2)=x2(212)

なので

x=c(212),cR

固有ベクトルのひとつは(212)となる

固有空間V(λ)

V(2)={c(212)|cR}

λ=5の場合

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import sympy as sp

l = sp.Symbol("l")
M = sp.Matrix([
    [1-l, 2, 0],
    [2, 2-l, 2],
    [0, 2, 3-l],
])
print(M.eigenvals())
M.eigenvects()
Hide code cell output
{5 - l: 1, 2 - l: 1, -l - 1: 1}
[(2 - l,
  1,
  [Matrix([
   [  -1],
   [-1/2],
   [   1]])]),
 (5 - l,
  1,
  [Matrix([
   [1/2],
   [  1],
   [  1]])]),
 (-l - 1,
  1,
  [Matrix([
   [ 2],
   [-2],
   [ 1]])])]
  1. (211121112)

1. 固有値を求める

固有方程式

det(AλE)=det(2λ1112λ1112λ)=0

を解く。

det(AλE)=det(2λ1112λ1112λ)=(2λ)3+1+13(2λ)=(2λ)(2λ)(2λ)+26+3λ=(44λ+λ2)(2λ)4+3λ=84λ8λ+4λ2+2λ2λ34+3λ=λ3+6λ212λ+3λ+84=λ3+6λ29λ+4

因数定理を使う:f(λ)=λ3+6λ29λ+4λ=1を試しに代入すると、f(1)=1+69+4=0。0になるので、因数の一つは(λ1)であることがわかる

組立除法により、f(λ)=(λ1)×(λ25λ+4)=(λ1)(λ1)(λ4)であることがわかる

よってλ=1,4

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import sympy as sp

l = sp.Symbol("l")
M = sp.Matrix([
    [2-l, 1, 1],
    [1, 2-l, 1],
    [1, 1, 2-l],
])
det = M.det()
print(f"{det=}")

print(f"factor: {sp.factor(det)}")

from sympy.solvers import solve
print(f"λ={solve(det)}")
Hide code cell output
det=-l**3 + 6*l**2 - 9*l + 4
factor: -(l - 4)*(l - 1)**2
λ=[1, 4]

λ=1の場合

(AλE)x=(111111111)(x1x2x3)=0

x1+x2+x3=0

c1,c2Rとおき、

x1=c1x2=c2x3=c1c2

とする。

x=c1(101)+c2(011)

となり、固有空間は

V(1)={c1(101)+c2(011)|c1,c2R}

となる。固有ベクトルの例は、c1=c2=1とおいて

(101)+(011)=(112)

λ=4の場合

(AλE)x=(2λ1112λ1112λ)(x1x2x3)=(211121112)(x1x2x3)=0
{2x1+x2+x3=0x12x2+x3=0x1+x22x3=0

1行目から2行目を引けば

3x1+3x2=0x2=x1

1行目を2倍して2行目に足せば

3x1+3x3=0x3=x1

よって

x=x1(111)

なので

x=c(111),cR

固有ベクトルのひとつは(111)となる

固有空間V(λ)

V(4)={c(111)|cR}

問3#

正方行列 A および λ に関する多項式 f(λ) をそれぞれ

A=(13111923),f(λ)=λ4λ3λ2+9λ1

により定める。行列多項式 f(A) を計算せよ。

事前知識:

  • 行列多項式は多項式の変数部分に行列をとったもの

  • 行列多項式において、1は単位行列として扱う

  • もしλが固有値でfが固有多項式だとすると、ケイリー・ハミルトンの定理よりf(A)=Oだが、問題中のf(λ)は、λを使っていてややこしいが固有多項式ではない(2次の行列なのにλ4など2より高次の項があるため)

ケイリー・ハミルトンの定理(2次の正方行列の場合)

A=(abcd)

の場合、固有多項式は

ϕA(λ)=det(AλI)=det(aλbcdλ)=(aλ)(dλ)bc=adaλdλ+λ2bc=λ2(a+d)λ+(adbc)

今回はケイリー・ハミルトンの定理における

A2(a+d)A+(adbc)

の部分は、

A2(a+d)A+(adbc)=A2(13+23)A+(13231119)=A2A+(29119)=A2A1

となる

問題文中の行列多項式を整理すると、ケイリー・ハミルトンの定理によりA2AI=0となるため

f(A)=A4A3A2+9A1=A2(A2AI=O)+9A1=9A1

となる。

よって

f(A)=9AE=9(13111923)(1001)=(939999183)(1001)=(39916)(1001)=(29915)
import sympy as sp

M = sp.Matrix([
    [1/3, 11],
    [1/9, 2/3],
])
I = sp.Matrix([
    [1, 0],
    [0, 1],
])

(M @ M @ M @ M) - (M @ M @ M) - (M @ M) + 9 * M - I
[2.0991.05.0]

問4#

次の問いに答えよ。

  1. 零写像の定義を書け。

  2. f をベクトル空間 V の線形変換とする。 m 個の f から得られる合成写像を fm と書く。例えば、 f2=ff,f3=fff である。また、 f1=f と約束する。ある自然数 m に対して、 fm が零写像となるならば、 f の固有値は 0 のみであることを示せ。

  1. 零写像の定義を書け。

定義域の任意の元を定義域の零元に写す写像のこと。

すなわち、写像をf:XYとすると、xX,f(x)=0Yとなる写像のこと。

  1. f をベクトル空間 V の線形変換とする。 m 個の f から得られる合成写像を fm と書く。例えば、 f2=ff,f3=fff である。また、 f1=f と約束する。ある自然数 m に対して、 fm が零写像となるならば、 f の固有値は 0 のみであることを示せ。

f(x)=λxとおくと、合成写像ff(x)=f(f(x))

f(f(x))=f(λx)=λf(x)=λ2x

同様に、m2について

fm(x)=fm1(f(x))=fm1(λx)=λmx