練習問題メモ 10(特別な形をした行列式)

練習問題メモ 10(特別な形をした行列式)#

10.1#

ヴァンデルモンドの行列式について、次の問いに答えよ。

  1. 行列式

|111123122232|

をサラスの方法とヴァンデルモンドの行列式を用いる方法の 2 通りで計算せよ。

サラスの方法:

|111123122232|=2×32+3+2223222×3=18+3+42912=21+4221=2

ヴァンデルモンド

|111123122232|=(21)(31)(32)=1×2×1=2
  1. 行列式

|1111123n122232n21n12n13n1nn1|

を計算せよ

(21)(31)××(n1)×(32)(42)××(n2)×(n(n1))
=1×2××(n1)×1×2××(n2)×1
=(n1)!×(n2)!××(n(n1))!=1!×2!××(n1)!

10.2#

次の 1~2 の行列式を計算せよ

|xa1a2an11a1xa2an11a1a2xan11a1a2a3x1a1a2a3an1|
memo

3次のとき

|xa11a1x1a1a21|=x2+a12+a1a2a1xa12a2x=x2a1xa2x+a1a2=(xa1)(xa2)

n+1列にa1を掛けて第1列から引く

|xa1a1a2an110xa2an110a2xan110a2a3x10a2a3an1|

n+1列にa2を掛けて第2列から引く

|xa1a1a2a2an110xa2a2an1100xan1100a3x100a3an1|

これを第n列まで繰り返し、上三角行列にする

|xa1a1a2a2a3an1an10xa2a2a3an1an100xa3an1an1000xan100001|

三角行列の行列式は対角成分の積であるという性質より、

i=1n(xai)

となる

別の(もっと非効率な)解き方
|xa1a2an11a1xa2an11a1a2xan11a1a2a3x1a1a2a3an1|

第i行(1i<n)について、i+1行の-1倍を加えて上三角行列にする

|xa1a1x0000xa2a2x0000xa3an10000xan0a1a2a3an1|

(n1,n1)にある1を(1,1)まで持っていきたい

n+1列を第1列まで移動する(隣り合った列同士で位置を入れ替える行為をn2回繰り返す(n1次の行列なのでn2))

n+1行を第1行まで移動する(隣り合った行同士で位置を入れ替える行為をn2回繰り返す)

(合計2(n2)=2n4回繰り返した→偶数回→行列式の符号は変わらず)

|1a1a2a3an0xa1a1x0000xa2a2x0000xa3an10000xan|

三角行列の行列式は対角成分の積なので

1×|xa1a1x000xa2a2x000xa3an1000xan|=i=1n(xai)
|111112111131111n|

1行目を2~n行目から差し引いて

|111101000020000n1|

という上三角行列の形にすれば、三角行列の行列式は対角成分の積で求められるという性質により、答えは

(n1)!

10.3#

次の[]を埋めよ。

自然数 n に対して、

Dn=|111112221233123n|

とおく。 Dn の値を n に関する数学的帰納法により求める。

n=1 のとき、 D1=[1] である。

[1]=1

n=k(k は自然数 ) のとき、 Dk=[2] であると仮定する。 n=k+1 とすると、

[2]=1
Dk+1=|111112221233123k+1|=|100011111122112k|([3])

[3] = 列基本変形(第1列を-1倍して第2~k+1列に加えた)

=D[4]([5] に関する余因子展開 )=[6]( 帰納法の仮定 )

よって、 Dn=[7] であることが示された。

[4]=k
[5]=1
[6]=1
[7]=1

10.4#

A=(aij) を偶数次の交代行列とする。このとき、 |A|A の成分 aij の多項式 P を用いて、

|A|=P2

と表させることがわかる。

  1. 2 次の交代行列の行列式を直接計算し、上の事実を確かめよ。

  2. 4 次の交代行列の行列式を直接計算し、上の事実を確かめよ。

2次の場合#

A=(0a12a120)

とすると、サラスの方法だと

|A|=0(a12×a12)=a122

なので、

|A|=P2

から

2次の場合のパフィアンP

P=±a12

4次の場合#

A=(0a12a13a14a120a23a24a13a230a34a14a24a340)

とする。

第1行についての余因子展開を使うと

|A|=a12a~12+a13a~13+a14a~14

a~12=(1)3|a12a23a24a130a34a14a340|=1×(a13a34a24a23a34a14a12a342)=a13a34a24+a23a34a14+a12a342
a~13=(1)4|a120a24a13a23a34a14a240|=a13a242a14a23a24a12a24a34
a~14=(1)3|a120a23a13a230a14a24a34|=1×(a12a23a34+a13a23a24a14a232)=a12a23a34a13a23a24+a14a232

なので

|A|=a12a~12+a13a~13+a14a~14=a12(a13a34a24+a23a34a14+a12a342)+a13(a13a242a14a23a24a12a24a34)+a14(a12a23a34a13a23a24+a14a232)=a12a13a34a24+a12a14a23a34+a122a342+a132a242a13a14a23a24a12a13a24a34+a12a14a23a34a13a14a23a24+a142a232=2(a12a14a23a34)2(a12a13a24a34)2(a13a14a23a24)+a122a342+a132a242+a142a232=(a12a34a13a24+a14a23)2

よって、

P=±(a12a34a13a24+a14a23)
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# 因数分解はsympyを使った
from sympy import symbols, factor, expand
a12, a13, a14, a23, a24, a34 = symbols("a12, a13, a14, a23, a24, a34")

F = 2 * (a12 * a14 * a23 * a34) - 2 * (a12 * a13 * a24 * a34) - 2 * (a13 * a14 * a23 * a24)\
    + a12**2 * a34**2 + a13**2 * a24**2 + a14**2 * a23**2
factor(F)
(a12a34a13a24+a14a23)2