行列式の性質#
線形性・交代性・規格化#
行列式を以下の3つの性質をもつものとする定義に従えば、定義から以下の性質を持つ。
線型性
1つのベクトル(行や列)に対して
交代性
第
規格化
単位行列
明示公式からの導出#
ライプニッツの明示公式
に基づく説明
線形性#
まず定数倍について
1つの列(列)を
続いて和について
1つの行が 2つの行べクトルの和である行列の行列式は、他の行は同じでその行を各々の列べクトルとした行列の行列式の和になる
証明:
交代性#
という性質。
証明:
このとき、
となる。符号は
となる。
規格化#
三角行列の行列式は対角成分の積になるという定理(後述)から、
行列式の積 = 積の行列式#
乗法性
が成り立つ
証明
よって
転置行列の行列式#
転置不変性
が成り立つ
転置不変性のため、列に成り立つことは行でも成り立つ。
逆行列の行列式#
逆行列の行列式
が成り立つ
証明
ゆえに
ゼロが多い行列の行列式#
行列の
証明
となる。つまり、
ここで
三角行列の行列式#
上三角行列の行列式
上三角行列
証明
前出の定理を繰り返し適用する。すなわち
これを続ければ
下三角行列の行列式
下三角行列
証明
行列を転置しても行列式の値は変わらない
という性質を使い、下三角行列を転置して上三角行列にすることで
となる
変形に関する性質#
以下は行に関しても列に関しても成り立つ(転置不変性のため)
1 つの列を
倍すると, 行列式は 倍になる.1 つの列の成分がすべて 0 である行列の行列式は 0 である.
1 つの列が 2 つの列べクトルの和である行列の行列式は, 他の列は同じでその列を各々の列べクトルとした行列の行列式の和になる.
2つの列を入れ換えると行列式は -1 倍になる.
行列の列の順序を置換
によって変更すると行列式は 倍になる.2 つの列が等しい行列の行列式は 0 である.
1つの列に任意の数をかけて他の列に加えても行列式の値は変わらない.
1つの列を 倍すると, 行列式は 倍になる#
線形性によるもの。
行列
証明
2つの列が等しい行列の行列式は0#
2つの列が等しい行列の行列式は0
証明
とする。
1次従属な行列の行列式は0
同様に、
基本変形に対する不変性#
1つの行(列)に任意の数をかけて他の行(列)に加えても行列式の値は変わらない
行列
例:
1つの行(列)に任意の数をかけて他の行(列)に加えても行列式の値は変わらない
という定理により、ある行を定数倍して他の行に加える操作によって行列を変形して解くことができる。
を求めたいとき、これは3次なのでサラスの方法でもよいが、変形して解いてもよい。
第1行を4倍して第2行から引く
第1行を7倍して第3行から引く
という操作を行って
として、第1列は
としてもよい。
2つの列を入れ換えると行列式は -1 倍になる#
交代性より、あるいは明示公式から
ブロック行列の行列式#
とする。
対角なブロック行列には以下が成立する
多重線形性#
行列
のように任意の列への線形和が全体への線形和と等しいような法則性があること
import numpy as np
A = np.array([
[1, 2],
[1, 3]
])
print(f"det(A) = {np.linalg.det(A)}")
c = 5
print(f"det(cA) = {np.linalg.det(c * A):.1f}")
print(f"det(cA) - c^n det(A) = {np.linalg.det(c * A) - c**A.shape[0] * np.linalg.det(A):.1f}")
det(A) = 1.0
det(cA) = 25.0
det(cA) - c^n det(A) = -0.0
A[:, 0] *= c
A
array([[5, 2],
[5, 3]])
np.linalg.det(A)
4.999999999999999
参考文献#
川久保勝夫(2010)『線形代数学 (新装版)』