極限#
関数の極限#
関数\(y=f(x)\)において、変数\(x\)が一定な数\(a\)に限りなく近づいていくとき、それにつれて関数\(f(x)\)の値が一定な値\(b\)に限りなく近づくとする。
このことを
\(x\)が\(a\)に限りなく近づくとき、関数\(f(x)\)には極限が存在して、その 極限値 は\(b\)である
あるいは
関数\(f(x)\)は\(b\)に 収束 する
という。そして
と表す。
例:関数\(f(x)=x^2\)において、変数\(x\)が2に限りなく近づくとき、\(f(x)\)の値は4に限りなく近づく
変数\(x\)が数列
の値を取り2に近づいていくとき、関数\(f(x)=x^2\)の値は
関数の極限の性質
関数の極限について、次のことが成り立つ
I. \(f(x)=C(C\) : 定数 \()\) ならば,
II. \(\displaystyle \lim _{x \rightarrow a} f(x)=A, \lim _{x \rightarrow a} g(x)=B\) ならば,
\(\displaystyle \lim _{x \rightarrow a} k f(x)=k A \quad(k\) : 定数)
\(\displaystyle \lim _{x \rightarrow a}\{f(x) \pm g(x)\}=\lim _{x \rightarrow a} f(x) \pm \lim _{x \rightarrow a} g(x)=A \pm B\)
\(\displaystyle \lim _{x \rightarrow a}\{f(x) \cdot g(x)\}=\lim _{x \rightarrow a} f(x) \cdot \lim _{x \rightarrow a} g(x)=A \cdot B\)
\(\displaystyle \lim _{x \rightarrow a} \frac{f(x)}{g(x)}=\frac{\lim _{x \rightarrow a} f(x)}{\lim _{x \rightarrow a} g(x)}=\frac{A}{B} \quad(B \neq 0)\)
右極限、左極限#
右極限、左極限
変数\(x\)が右から\(a\)に近づくとき\(x\to a+0\)、左から\(a\)に近づくとき\(x\to a-0\)と書き、それぞれの極限値を
と表す。
とくに\(a=0\)のときは\(x\to +0\)、\(x\to -0\)と書く。
例:
絶対値の定義
より、\(x > 0\)ならば\(\frac{|x|}{x} = \frac{x}{x} = 1\) \(x < 0\)ならば\(\frac{|x|}{x} = \frac{-x}{x} = -1\) となるため。
この例では、関数\(f(x) = |x|/x\)は\(x=0\)では定義されていないことがわかる。ここからわかるように、\(\lim_{x\to a} f(x) = b\)は\(x=a\)のとき\(f(a)=b\)であることを主張しているわけではない。
正の無限大と負の無限大
変数 \(x\) の値が正で限りなく大きくなるとき 正の無限大 になるといい、 \(x \rightarrow+\infty\) (または単に \(x \rightarrow \infty\) ) と表わす。
変数 \(x\) が負でその絶対値が限りなく大きくなるとき 負の無限大 になるといい \(x \rightarrow-\infty\) で表わす.
変数\(x\)が一定な値\(a\)に限りなく近づくとき、関数\(f(x)\)の値が正で限りなく大きくなっていくならば\(x\)が\(a\)に近づいたときの関数\(f(x)\)の極限は 正の無限大 であるといい、
で表す。極限が 負の無限大 になるなら
で表す。
例:
変数\(x\)が\(-1, -2, \cdots, -n, \cdots\)と絶対値が無限大に近づく場合、\(f(x)=1/x\)は\(-1, -1/2, \cdots, -1/n, \cdots\)と0に近づくため。
\(\varepsilon - \delta\)論法#
関数の極限
が存在するためには\(f(x)\to b\)を\(x\to a\)で保証できればよいため、\(x\to a\)で\(|f(x) - b| < \varepsilon\)になることを保証できれば、関数の極限が存在することになる
よって、関数の極限についてのより厳密な定義は次のようになる
定義
任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して、\(0<|x-a|<\delta\) ならば \(|f(x)-b|<\varepsilon\) になるような \(\delta\) が存在する
例:
を証明せよ。
解:
任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して \(0<|x-2|<\delta\) ならば \(\left|x^2-4\right|<\varepsilon\) となるような \(\delta\) を見つけなければならない。
\(0<|x-2|<\delta\) ならば
よって\(\delta\) として, 1 か \(\varepsilon / 5\) の小さい方をとれば
\(\varepsilon \geqq 5\) ならば \(\delta=1\) で, \(\left|x^2-4\right|<\delta^2+4 \delta=5 \leqq \varepsilon\)
\(\varepsilon \leqq 5\) ならば \(\delta=\varepsilon / 5\) で, \(\left|x^2-4\right|<\delta^2+4 \delta<5 \delta=\varepsilon\)
すなわち\(|x^2 - 4| < \varepsilon\)となる。したがって\(\lim_{x\to2} x^2 = 4\)
実際に数値を入れて確かめるとする。
\(|x^2 - 4| < 0.1\)とするには、\(\delta = \varepsilon / 5 = 0.1 / 5 = 0.02\)
\(0<|x-2|<0.02\)より、\(1.98 < x < 2.02\)だから、\(3.9204<x^2<4.0804\)のため\(-0.0796 < x^2 - 4 < 0.0804\)であり\(|x^2 - 4|<0.1\)が成り立っている
連続#
連続
点\(x=a\)の近くで定義されている関数\(y=f(x)\)において、次の3つの条件が成り立つとき、\(y=f(x)\)は\(x=a\)で 連続 (continuous)であるといい、1つでも成り立たないときは 不連続(discontinuous)であるという。
\(f(a)\)が定義されている
\(\lim_{x\to a} f(x)\)が存在する
\(\lim_{x\to a} f(x) = f(a)\)
例:
\(f(x)=x^2\)は\(x=2\)で連続である。なぜなら、\(\lim_{x\to 2} f(x) = 4 = f(2)\)であるため。
別の言い方をすると
任意の正の数 \(\varepsilon\) に対して、適当な \(\delta\) をとって、\(|x-a|<\delta\) であるすべての \(x\) について \(|f(x)-f(a)|<\varepsilon\) が成り立つ
連続関数の性質#
性質(1)
(1) 関数 \(f(x)\) と \(g(x)\) が \(x=a\) で連続ならば、
は \(x=a\) で連続である。ただし最後の式では \(g(a) \neq 0\) とする。
例えば 多項式(polynomial)
は \(-\infty < x < \infty\)で連続である。
また、有理関数(rational function)
は分母が0になる点を覗いていたるところで連続である
性質(2):連続関数の合成関数は連続
(2) 関数 \(f(x)\) が \(x=a\) で連続で、関数 \(g(x)\) が \(f(a)\) で連続ならば、合成関数 \(g(f(x))\) は \(x=a\) で連続である。
すなわち、連続関数を変数とする連続関数は 連続である。
例えば \(\sin (x^2)\) や \(\sin (\sin x)\) は \(-\infty<x<\infty\) で連続である
性質(3)
関数 \(f(x)\) が \(a \leqq x \leqq b\) で連続で単調増加(単調減少)であれば、 逆関数 \(f^{-1}(x)\) は 1価連続で単調増加(単調减少)である。
例:\(y=2x\)と\(y=x/2\)
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import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
x = np.linspace(0, 1, 50)
y1 = 2*x
y2 = x/2
fig, ax = plt.subplots(figsize=[4, 2])
ax.plot(x, y1, label=r"$y = 2x$")
ax.plot(x, y2, label=r"$y = x/2$")
ax.legend()
fig.show()
性質(4):中間値の定理
\(f(a)=A,\ f(b)=B\) とする。 もし \(A<B\) であれば、 \(A<\) \(C<B\) を満足する任意の数 \(C\) に対して、 \(f(c)=C\) となる数 \(c\) が開区間 \(a<x<b\) に少なくとも 1つ存在する。
同様に、もし \(A>B\) であれば、 \(A>C>B\) を満足する任意の数 \(C\) に対して、\(f(c)=C\) となる数 \(c\) が \(a<x<b\) に少なくとも 1つ存在する。
言いかえると、 \(x\) が \(a\) から \(b\) まで連続的に動くとき、連続関数は、\(f(a)\) と \(f(b)\) の間の値を少なくとも一度は通過する。
性質(5):中間値の定理の特別な場合
\(f(a)\)と\(f(b)\)が異なる符号を持つならば、\(f(c)=0 (a<c<b)\)を満足する数\(c\)が少なくとも1つ存在する。
性質(6)
関数 \(f(x)\) は \(a \leq x \leq b\) で最大値と最小値をとる。
性質(7)
区間内のある点 \(c\) で \(f(c)>0\) とする。 このとき、 \(c-\delta<x<c+\delta\) であれば \(f(x)>0\) であるような正の数 \(\delta\) が存在する。
すなわち、連続関数 \(f(x)\) で \(f(c)>0\) ならば その近くではやはり \(f(x)>0\) である。