環論#
環 (ring) は2つの演算が定められており、いくつかの性質を満たす集合のこと。
環#
定義
空ではない集合 \(R\) が 2 つの演算\(+, \times\) をもち、 次の5つの性質を満たすとき、 \(R\) は 環 (ring) であるという。
ただし、以下において \(a, b, c\) はすべて \(R\) の要素とする。
(1) 結合法則:\(+, \times\) についてそれぞれ結合法則が成り立つ:
すべての \(a, b, c\) に対して
(2) 交換法則: \(+\) について交換法則が成り立つ:
すべての \(a, b\) に対して、 \(a+b=b+a\)
(3) 分配法則: \(+, \times\) について分配法則が成り立つ:
すべての \(a, b, c\) に対して
(4) 単位元: \(+, \times\) についてそれぞれ単位元がある:
すべての \(a\) に対して, \(a+0=0+a=a\),
すべての \(a\) に対して, \(a \times 1=1 \times a=a\)
となるような特別な \(R\) の要素 \(0,1\) がある・
(5) + の逆元:\(+\) については逆元がある:
すべての \(a\) に対して,ある要素 \(-a\) があり
環の例#
整数全体\(\mathbb{Z}\)、有理数全体\(\mathbb{Q}\)、実数全体\(\mathbb{R}\)などは足し算・引き算・掛け算が定義されているため、環である
多項式全体のなす環もある:多項式\(a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots + a_1 x + a_0\)(\(n\)は0以上の整数、\(a_n,a_{n-1},\dots,a_0\)は実数)の集合\(\mathbb{R}[x]\)も環であり、多項式環 という。
環の分類#
可換環:\(\times\)について交換法則が成り立つ環のこと。例えば整数全体や多項式全体の集合は可換環である。
非可換環:\(\times\)について交換法則が成り立たない環のこと。例えば線形代数学における行列は非可換である
可換環#
可換環は歴史的には代数的整数論、代数幾何学、不変式論などに由来する。
代数的整数論:整数の拡張を考えるとき、環としての拡張を考えることになる。また素因数分解の一般化や、「イデアル」と呼ばれる概念を導入するために環の概念も整備されていった。
代数幾何学:放物線\(y=x^2\)すなわち\(x^2-y=0\)など、座標空間上の「多項式=0」の形で表される図形に関する幾何学。