一般化モーメント法#
モーメント法#
モーメント法 (method of moment)は統計的推定における方法の1つで、母集団におけるモーメント(母平均など)を標本におけるモーメント(標本平均など)で置き換えて推定を行う。
確率変数
を満たすように
モーメント法ではこの条件を解いて
標本
により定義される。
大数の法則により、i.i.d.のサンプルの標本モーメントは母集団モーメントに確率収束する、すなわち
であるため、標本モーメントを用いて推定ができる。
例:正規分布の平均と分散
正規分布
原点のまわりの1次と2次のモーメントは
であるため、モーメント条件を
とおいて標本
標本対応したモーメント条件
を解くと
となり、標本平均・標本分散と一致する
例:線形回帰モデル
線形回帰モデル
のパラメータ
このモデルから
標本対応は
行列表記では
となる。これを解くと
と、最小二乗法の解と一致する ::
一般化モーメント法(GMM)#
未知のパラメータの数
しかし、
一般化モーメント法(generalized method of moment: GMM) は
モーメント条件のほうが多い場合、
が全体的に0に近くなるように
となるように
この方法は 最小距離推定 (minimum distance estimation)と呼ばれる広いクラスの推定法の中の特別な場合だと解釈できるが、計量経済学ではこの方法を最初に導入したHansen (1982) に倣って 一般化モーメント法 (generalized method of moment: GMM)と呼ぶ。
この最小化問題は
を解いて求める。
ただし、
である。
一般化モーメント法と操作変数法#
において、
を直交条件にすると、標本対応は
となる。したがって
である。
ここで
および特定の条件下で
であるので
となる
を用いると
であるので、この目的関数を
にあてはめ(左側のスコア関数だけ微分)した
を解くことによって推定量が得られる。
となり、操作変数推定量(2段階最小二乗法推定量)に一致する。
操作変数の数
と単純化できる
展開
一般化モーメント法と最尤推定法#
最尤推定量は対数尤度の導関数をスコア関数とした
という直交条件の下でのGMM推定量と考えることができる。
確率密度によるモーメント条件#
となる。両辺を
となる。
という関係を用いて
とすることができる。
スコア関数を
とおけば、
となり、これは条件付き確率
となっている。繰り返し期待値の法則により
であるから、この式を直交条件として用いることができる。
モーメント推定量と最尤推定量#
モーメント法では標本モーメント条件
を解く。
最尤推定法では対数尤度関数の最大化において
を解くため、GMM推定量と最尤推定量は一致する。
線形回帰モデル
を考える(簡単のため
誤差が正規分布に従うと仮定して尤度関数を特定化する場合、
対数尤度の導関数をスコア関数とすると
なので、この直交条件は
(※前述のように、この直交条件は
このスコア関数の標本対応は
であり、これを解くと
参考文献#
西山慶彦, 新谷元嗣, 川口大司, & 奥井亮. (2019). 計量計済学.
難波明生. (2015). 計量経済学講義.
末石直也. (2015). 計量経済学: ミクロデータ分析へのいざない.