同次連立1次方程式#
連立1次方程式
において\(\boldsymbol{b}=\boldsymbol{0}\)であるとき、同次 あるいは 斉次 (homogeneous)といい、
の形の連立1次方程式を、 同次連立1次方程式 や 連立斉1次方程式 という。
自明な解#
同次連立1次方程式は、明らかに解\(\boldsymbol{x}=\boldsymbol{0}\)をもつので、これを 自明な解 という。
別の表現をするなら、 「連立方程式\(Ax=b\)の拡大係数行列\((A|b)\)について\(\rank A = \rank (A|b)\)であれば解が存在する」という定理があるため、同次連立1次方程式なら\(\rank A= \rank(A|0)\)となり必ず解が存在する。
解空間#
解全体の集合\(\left\{\boldsymbol{x} \in \mathbb{R}^m \mid A \boldsymbol{x}=\mathbf{0}\right\}\)は\(\mathbb{R}^m\)の部分空間になり、これを 解空間 という。
解空間が \(\{ \boldsymbol{0} \}\)であるか、それより大きい部分空間であるかに関する基本的な定理として次のものがある
定理
同次連立1次方程式が自明な解以外を持つための必要十分条件は\(|A|=0\)である
証明
もしも\(|A|\neq 0\)だと\(Ax=0\)の解は一意的であるから、自明な解\(x=0\)以外の解を持たない。
\(|A| = 0\)の場合については\(n\)についての帰納法で証明できる。
\(n=1\)のとき、\(|A|=a_{11} = 0\)であるため任意の数が解になる。
\(n > 1\)のとき、もし第1列の\(a_{i1}, i=1,2,\dots,n\)がすべて0であれば、任意の数\(x_1\)に対して、
が解になる。
次に、ある成分\(a_{i1}\)が0でないと仮定する。方程式の第1列について前進消去した係数行列を\(A'\)とすると
となり、仮定より\(a_{11}\neq 0\)なので
である。ここでこれらの係数についての\(n-1\)個の未知数\(x_2,x_3,\dots,x_n\)に関する同次連立一次方程式
を考えると、係数行列の行列式が0であるから、帰納法の仮定より自明でない解をもつ。その一つを\((d_2,\dots, d_n)\)とする。これを
に代入すると、方程式
が得られる。この\(x_1\)に関する方程式は\(a_{11}\neq 0\)より解を持つため、その解を\(d_1\)とすると
で与えられる。
こうして得られた解\((d_1, d_2,\dots, d_n)\)はもとの方程式の解であり、\(2\leq i \leq n\)について\(d_i \neq 0\)であるからこの解は自明でない解である。
定理(解空間の次元)
\(n\times m\)行列\(A\)で与えられる同次連立1次方程式\(Ax=0\)の解の集合\(\{x \in \mathbb{R}^m | Ax = 0\}\)は\(\mathbb{R}^m\)の部分空間になり、この空間の次元は
に等しい
証明
\(\{x \in \mathbb{R}^m | Ax = 0\}\)は\(A\)を線形写像
とみなしたときの\(\ker A\)に他ならない。よって線形写像の基本定理より
解空間の1組の基底をその連立1次方程式の 基本解 といい、解空間の次元を 解の自由度 という。
基本解の1次結合で書かれる一般の解を 一般解 という。
横長の係数行列は自明でない解になる#
定理
\(n\times m\)行列\(A\)で与えられる同次連立1次方程式\(Ax=0\)は、\(n<m\)ならば自明でない解を持つ
証明
\(\operatorname{rank} A \leqq m\) であるから、解の次元 \(=m-\operatorname{rank} A>0\)
一意な解を持つための条件#
定理
\(n\times m\)行列\(A\)で与えられる同次連立1次方程式\(Ax=0\)がただ1つの解を持つための必要十分条件は
証明
線形写像の定理 \(\operatorname{dim} \operatorname{Ker} A=m-\operatorname{rank} A\) より、