VaR (Value at Risk)#

Value at Risk(VaR) は金融リスク管理の中心的な指標のひとつで、「ある信頼水準のもとで、一定期間に予想される最大損失額」を表す。

簡単言えば「最悪どれくらい損をする可能性があるか」を統計的に定量化する方法。

定義#

Value at Risk (VaR)

ある信頼水準 \(\alpha\)(たとえば 95% や 99%)におけるVaRは次のように定義される

\[ P(L>\mathrm{VaR}_\alpha)=1-\alpha \]
  • \(L\)は損失額(確率変数)

  • \(\mathrm{VaR}_\alpha\):信頼水準\(\alpha\)におけるVaR。「\(1-\alpha\)の確率でこれ以上の損失が起こる」という閾値

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例えば、あるポートフォリオの日次リターンが正規分布\(N(\mu, \sigma^2)\)に従うとする。

このとき、

\[ \operatorname{VaR}_\alpha=-\left(\mu+z_\alpha \sigma\right) \]

ここで \(z_\alpha\) は標準正規分布のパーセント点(例えば95%信頼水準なら \(z_{0.95} = 1.645\))。

例:

  • \(\mu = 0\)(平均リターン0)

  • \(\sigma = 2%\)

  • \(\alpha = 95%\)

とすると、

\[ \mathrm{VaR}_{0.95}=-(0+1.645 \times 0.02)=-0.0329 \]

つまり「1日で3.29%以上の損失が起きる確率は5%」となる。

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例えば10年国債のリスクを定量評価するとき、過去のデータ(例えば過去5年の金利の標準偏差やパーセンタイル)に基づいてVaRを計算する

Conditional VaR (CVaR)#

関連してCVaRというものがある

Conditional VaR (CVaR) / Expected Shortfall (ES)

\[ E S_\alpha=E\left[L \mid L>\operatorname{VaR}_\alpha\right] \]

「VaRを超えた場合の平均損失額」を意味する

VaRショック(2003)#

2003年に日本国債金利が急上昇(国債価格が急落)したことがあった。

この理由の一つがVaRによるリスク管理だったという説があり、VaRショックと呼ばれる。

VaRは過去の実測の価格変動(標準偏差)からリスクを評価するため、

国債価格が下落する
→ VaRが上がる
→ ポートフォリオのリスク(VaR)を減らすため、金融機関などが国債を売却する
→ 国債価格が下落する
→ VaRが上がる
→ (以下繰り返し)

という悪循環があったとされる

VaRショックについて―2003年における金利急騰時のケース・スタディ― : 財務省